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うっかりヅラをかぶれば瞬く間に見破られて、よりひどい称号を得ることになるでしょう。ハゲは、逃げも隠れもできない人生の惨状におけるひとつの態様なのです。男性にとって発毛力の減退は運命であって、男性が中年を経て生きる証とは薄くなりなくなっていく頭髪を惜しみながらも受け入れ、悟りを開きながら苦難を乗り越えていくことなのかもしれません。
自ら鏡を見ながら、こんなはずではなかったと嘆き、親を恨んでも始まりません。現実を淡々と受け入れながら、ハゲとして生きていくしかおっさんの人生には残されていないのです。この「気が付いたころにはどうにもならない」のが、生きることの辛み、そして苦味であります。
私たちおっさんにはウィル・スミスはいない
本来は、男性でも女性でも、容姿や病気など、本人のせいでないことを笑いのネタにすることがあってはならないことは言うまでもありません。
ただ、ハゲであれリストラであれ介護の現場であれ自殺であれ、中年男性が置かれている環境がいかにハードモードであるかは明確で、私たちおっさんには身体を張ってビンタをして守ってくれるウィル・スミスはいない、という点に尽きます。おっさんが枕を濡らす涙がやがて池となり、川になり、大河となってさかのぼるシャケが竜に化け、村々を焼いて回るのであります。
今回ほど、ウィル・スミスいいなと思ったことはありませんでした。
いろいろ批判はあるかもしれないけど、家族とその名誉のために立ち上がれる人になれるといいなと。