文春オンライン

ウィル・スミスの殴打事件が図らずも投げかけた「おっさんと頭髪」の問題

2022/04/01
note

「瞬間湯沸かし器」と言われようとも、怒るべき場面でしっかりと怒ることのできる人こそ、ストレスフルな現代社会で自分の尊厳を守って生きていくために必要なことだと思います。穏やかに黙って笑っているべき場面と、きちんと相手に怒るべき状況とを弁えられるのが本当の大人だと思うんですよ。

 ただ、暴力はイカンよな、どういう状況でも許されないよな、ということであれば、10連コンボは我慢して怒って詰め寄るフリをしたり、黙って抗議の退出をして家族への侮辱に怒っている理解を促すなどの汚い大人に成長していくのでありましょうか。

脱毛症はかなり大変な症状をともなう病気

 他方、ジェイダ・ピンケット・スミスさんの脱毛症は、ウィズニュースでも記事にされているとおり、かなり大変な症状をともなう病気です。遺伝性もあれば、環境要因も少なくない。ストレスにさらされて円形脱毛を発症した知人もおりますが、おいそれと他人に相談できるタイプの疾患でもありません。悩みを一人で抱えている人も少なくないんじゃないかと思います。

ADVERTISEMENT

ウィル・スミスがネタにされ怒った「脱毛症」、どんな病気? - withnews(ウィズニュース)@withnewsj
https://withnews.jp/article/f0220330003qq000000000000000W0bx10201qq000024537A

 問題は、そういうデリケートな病気を公然とイジることの是非であるはずが、ウィル・スミスが壇上に出て行ってクリス・ロックを殴ってしまったため、有耶無耶になっている部分があるんじゃなかろうか、ということです。

男性にとって発毛力の減退は運命である

 例えば、女性が脱毛症に悩んで困っていることには限りない共感と同情が集まる一方、男性がハゲ散らかして悩んだ末にバーコードに至るすべての有り様は容赦なくイジられ、俺たちの菅義偉以下偉い人も、その辺のおっさんも、等しく「ハゲのおっさん」とラベリングをされてしまう一件です。