北九州に住む書店員であるかぁなっき氏。彼はこれまでに膨大な数の実話怪談を集めてきた。そして、大学時代の後輩であり映画ライターの加藤よしき氏とともに、猟奇ユニット“FEAR飯”を結成。ライブ配信サービスTwitCastingで、2016年から「禍話」という怪談チャンネルで怪談を配信し続けている。

 まるで大学の先輩と飲み明かしているかのような、愉快な雑談の合間にふいに繰り出される怪談の恐ろしさは、多くのホラーファンをうならせるクオリティ。近年はプロの映画監督たちも魅了されているようで、今年4月29日から公開されるホラー映画『N号棟』を監督した後藤庸介は、昨年7月に「禍話」の実写ドラマ化作品を監督しているほどだ。

 今回は、そんな日々恐怖を拡散し続けている「禍話」のなかから、とある住宅で起きた奇怪な出来事をまとめた「間借りの家」というお話をお届けする――。(全2回の1回目/#2を読む)

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全然知らない人が家を間借り

 このエピソードはかぁなっき氏が知人のSさんから聞いた話を、Sさんのプライバシーを守るため細部を一部変えて語ったものだ。

「そういやさ、俺の前の家に“間借りしている奴”がいたことあったんだよね」

 今から数年前、Sさんがくつろぎながらテレビを観ていたとき、自宅に招いていた友人のTさんが、突然そう呟いた。

「間借り? 初めて聞いたよ、そんな話。親戚とかそういう居候がいたってこと?」

 テレビではちょうど、自宅をリフォームする番組が流れており、「手放すのではなく、時とともに成長していけるのがリフォーム住宅の魅力ですね!」と、レポーターが若干作り気味の笑顔で明るく語っていた。

 しかし、そんな画面を見つめるTさんの顔は、嫌な記憶の蓋をこじ開けられたような暗いものだった。

「いや、そういうんじゃなくてさ。全然知らない奴よ」

「え?」

「本当いるはずがないんだよな、あんな奴」

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体をモゾモゾさせながら寝返りを打ったとき…

 話はかつてTさんの両親、姉、そしてTさんが、とある九州の造成地に建つ2階建ての“その家”に、引っ越してきたことから始まる。