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「東大・京大卒の黒服を積極採用して…売上高は32億円」ススキノ最大級の“ニュークラ”CEOが実践する常識はずれの“成功モデル”

『日本水商売協会 ──コロナ禍の「夜の街」を支えて』より #2

2022/04/22
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 多くのキャストが、「稼げなくなるから、店をやめる」と言った。しかし、本当に辞めたのは10%ほどに過ぎなかった。波戸崎氏は「しばらく様子を見てほしい。確かに短期的には給料は減るかもしれないが、必ず良い方向に向かうはずだ」とキャストに伝え続けた。

 確かに、営業時間を短縮して半年ほどは、売上が下がった。深夜まで営業を続ける他店に、顧客が流れた時期もあった。しかし、徐々に客足が戻り始め、さらには右肩上がりで今も成長を続けているという。営業時間が短縮されたぶんを補うためにマーケティングに力を入れたこと、また法令を遵守する企業ということで、モラルが高く有能な社員が入社する機会が増えたことが原因だ。

 また、属人的な仕事をDX化など仕組化できるようになり、仕事の質や効率が格段に上がったことでサービスの質も上がり、一度は離れた顧客も、早い時間から来店してくれるようになったという。

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東大、京大、北海道大卒の学生を新卒採用

 業界の慣習に囚われないという意味では、高学歴者を積極的に新卒採用で受け入れていることも挙げられる。

 東大、京大、北海道大学を始めとする、いわゆる「旧帝国大学」と呼ばれる有名国立大学の学生を、新卒採用で入社させているのだ。彼らは、名だたる有名企業の内定を蹴って波戸崎氏が経営する「バルセロナ」グループに入社を決め、波戸崎氏はその度に、進路を反対する彼らのご両親の元へ説得のために訪問した。

 そもそも、業界的に新卒採用を行っているほうが珍しい。しかも、有名大学からの採用を積極的に行っている水商売のグループなど、恐らく他にはないのではないか。

 なぜ、新卒採用を始めたのか。それは、「このままだと、事業の成長が頭打ちになる」と感じたから、と波戸崎氏は言う。

 事業は、人が創り、育てるもの。だからこそ、優秀な人材の採用に力を入れるべきだと考えたのである。