ライブ配信サービスTwitCastingの怪談チャンネル「禍話」。これまでに2000話を超える怪談が紹介されており、多くのホラーファンを惹きつけている。

 同チャンネルでホストを務めるのは、北九州に住む書店員のかぁなっき氏と、彼の大学時代の友人であり映画ライターの加藤よしき氏。両名は猟奇ユニット“FEAR飯”を結成し、今日までストイックに「禍話」を配信し続けてきた。今回は、「禍話」から、不条理な恐怖が心に残る「かぞくの家」という話をお届けしよう。とある女子大生が、サークルの後輩の悩み相談に乗ったことをきっかけに迷い込んだ、白昼夢のような狂気の一夜とは――。(全3回の2回目。#1から読む)

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暗い部屋の奥から聞こえた声

 住宅はまばら。牧歌的とまではいかないが、目線の先には田んぼなどもちらほらあった。

「先輩、スーパーこっちです!」

 Fさんに先導されて、見知らぬ街を進んでいく。Fさんとは夕食を一緒に作ろうと話していたんだった。

 スーパーの喧騒に妙に心が落ち着くと同時に、なんだかんだ友人の家でご飯を作るというイベントにYさんは楽しみを感じ始めていた。これはいい兆候だ。緊張がほぐれてきた。

 買い物袋を下げ、すっかり暗くなった夜道を歩いていく。

 数軒の住宅の影が見え始めた。

 Fさんが、そのうちの一軒の前で足を止め、恥ずかしそうに振り返った。

「えっと、ここが家です」

 スーパーの袋をガサガサさせながら、カバンから鍵を取り出そうとするFさんを尻目に、Yさんは家を見上げた。

 立派な2階建ての家だ。自分のマンションでの一人暮らしも天国だと思っていたが、生活感がぎゅっと詰まった他人の実家を見ると、急に両親の住む家が恋しくなる。

 そうやって家を眺めていてとあることに気がついた。

 門灯が点いていない。

 家族は家にもう帰っているとのことだったが、人によってはまるで誰も住んでいないかのように見えるかもしれない。

 カチャン、キイッ……。

「どうぞー」

 Fさんに案内されて中へ入ると、他人の家の香りがYさんの鼻を抜けた。

©iStock.com

 家の中も明かりは点いていなかった。

 Fちゃんの家の習慣なのだろうか。それとも、予定に反してまだご両親が帰ってきていないのだろうか。

「お邪魔しまーす……」

「あーどうも、いらっしゃーい」

 予期せぬ声。暗い部屋の奥から聞こえてきたので、Yさんは少しギョッとしてしまったそうだ。奥からFさんのお父さんが出てきたのだ。

 パチン、パチンとFさんがそこらの明かりを点け始める。

 そこには少し線の細い体格のFさんのお父さんが立っていた。