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「お前はいい子だから、それ以上踏み込んだりしないだろ?」 1階の和室にたまっている“悪いもの”の恐怖の“正体”

「お前はいい子だから、それ以上踏み込んだりしないだろ?」 1階の和室にたまっている“悪いもの”の恐怖の“正体”

かぞくの家#1

2022/05/01
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 ライブ配信サービスTwitCastingの怪談チャンネル「禍話」。2016年から始まったこのチャンネルでは、これまでに2000話を超える怪談が紹介されており、そのコンテンツの豊富さとクオリティの高さで、今多くのホラーファンを惹きつけている。

 同チャンネルでホストを務めるのは、北九州に住む書店員のかぁなっき氏と、彼の大学時代の友人であり映画ライターの加藤よしき氏。両名は猟奇ユニット“FEAR飯”を結成し、今日までストイックに「禍話」を配信し続けてきた。

 近年はプロのホラー映画監督の手で実写ドラマ化されるなど、話題が尽きない「禍話」から、今回は不条理な恐怖が心に残る「かぞくの家」という話をお届けしよう。とある女子大生が、サークルの後輩の悩み相談に乗ったことをきっかけに迷い込んだ、白昼夢のような狂気の一夜とは――。(全3回の1回目。#2#3を読む)

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◆ ◆ ◆

「なんか、最近うちのお父さん変なんですよね」

 この話はかぁなっき氏の知人が福岡県で収集した怪談を、知人のプライバシーを守るために細部を変更した話だそうだ。

 地元から離れた大学に進学した女子大生のYさんは、一人暮らしをしながら授業とサークルを楽しみ、キャンパスライフを満喫していた。

 Yさんが2年生になったとき、所属するサークルに新入生のFさんという女性が入ってきた。

 愛想はいいもののどこか大人しく、話題の中心にグイグイ入っていくタイプではなかったFさんだが、面倒見がいいYさんは彼女にもよく話を振り、互いの気質は異なっていたものの良好な友人関係を築いていたそうだ。

 そんなある日、Yさんが講義の合間にサークルの部室で時間を潰していたときに、同じく部室を訪れたFさんと二人きりになったことがあった。

©iStock.com

 なんとなく、部室のテレビをつけながら「さっきの大ホールの講義めちゃくちゃ眠くて全然頭に入んなかったわぁ~」、「教授の言葉が全然頭に入ってこない授業ってありますよねぇ」などと他愛のない会話を交わす二人だったが、テレビのドラマで父親が娘に手をあげるシーンが映ったとき、ふとFさんがこう漏らしたそうだ。

「なんか、最近うちのお父さん変なんですよね」

 別段誰かに相談したいという雰囲気が込められていた言い方ではなかったという。

 だが、かねてよりFさんが実家から通学していることや、サークルがある日でも19時には必ず帰ってしまうことなど、彼女の家庭環境が比較的厳しめなのではと気にしていたYさんは、この話題がなんとなく引っかかったのだ。

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