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1階の奥の和室に「悪いものがたまりやすいんだ」

「え、それはお父さんがFちゃんに手を上げてくるってこと……?」

「え? いやいや違いますよ! そういうんじゃなくて、こう、なんだろう、風水とか方位とか、そういうのに妙に凝り出しちゃってて、どうしたものかなぁ~、と」

「あー、風水ね。まあ、風水くらいなら別に大丈夫なんじゃない」

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「うーん、まあ、あれが風水なのかわからないのが気になるところなんですが……」

「え、どういうこと?」

「なんか、私も全然わからないんですけど、あれ風水なのかな……え、ちょっと話してもいいですか?」

 おずおずと話し始めたFさんのお父さんの話は、確かに少々奇妙なものだった。

 Fさんの実家は2階建ての一軒家で、1階の奥の和室に「悪いものがたまりやすいんだ」と、しきりに父が唱えるようになっているのだという。

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「『一家の主がここで頑張らないといけないんだ』って、よく口癖みたいに言うんですよね。私とかが心配しても『お前は何もしなくていい』って」

「……どういうことだそりゃ?」

「変ですよね。2ヶ月くらい前から急に言いだすようになって、最近はその1階の奥の和室に一人で寝るようになっちゃって」

「なるほど……言い方失礼だったらごめんなんだけど、お父さんが変な宗教とかにハマりだしている可能性とかもゼロじゃないだろうし、そりゃ気になるわな」

「そうなんですよね……」

「まあ、私が力になれることないかもしれないけど、なんかあったらマジで全然、普通に相談してね。いきなり学生課とかに相談にいけるような話でもないでしょ?」

「はい。先輩、本当にありがとうございます」

 言葉通り、Yさんは自分が立ち入っていい話題なのかどうか迷ったそうだが、真面目な性格のFさんが苦しむ様子を見たくなかったため、思わずそう切り出してしまったのだそうだ。

「あの、先輩、今ちょっと時間いいですか?」

 それから1週間ほど経ったある日。

「あ、先輩!」

 授業が終わり一人廊下を歩いていたYさんは、後ろから駆け寄るFさんの声に振り向いた。

「ん、おつかれ~。どうした~?」

「お疲れ様です……あの、先輩、今ちょっと時間いいですか?」

 Fさんが神妙な面持ちで語ったのは、彼女の父親についての続報だった。Fさんの父親は依然、例の1階の奥の和室で一人寝ているそうなのだが、最近より様子がおかしくなっているというのだ。