ライブ配信サービスTwitCastingの怪談チャンネル「禍話」。これまでに2000話を超える怪談が紹介されており、多くのホラーファンを惹きつけている。

 同チャンネルでホストを務めるのは、北九州に住む書店員のかぁなっき氏と、彼の大学時代の友人であり映画ライターの加藤よしき氏。両名は猟奇ユニット“FEAR飯”を結成し、今日までストイックに「禍話」を配信し続けてきた。今回は、「禍話」から、不条理な恐怖が心に残る「かぞくの家」という話をお届けしよう。とある女子大生が、サークルの後輩の悩み相談に乗ったことをきっかけに迷い込んだ、白昼夢のような狂気の一夜とは――。(全3回の3回目。#1#2を読む)

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和室の襖をそっと開けると

 静まり返ったリビングのあまりの平然とした様子に、さっきまで騒音を感じていたのが嘘のように思えてきた。

 嫌な夢でも見ているみたい……。

 グーーー。

 突然の獣のような音に、Yさんは縮こまった。

 ……グーー、ハァーー……フゥー……グーー。

 Fさんのお父さんのいびきの音だった。寝苦しそうに呼吸を繰り返している。

 玄関、トイレ、洗面所、風呂場。Yさんは順に部屋を回ったが、どこにも人の気配はない。

……グーー、ハァーー……フゥー……グーー。

 あとは、今、いびきが聞こえているお父さんが寝ている和室と、その隣のお母さんが寝ている部屋だけだ。

 Yさんは、まずは手前のお母さんの部屋のドアを、携帯を持った手でそっと開け、中を覗いてみた。

 ぼんやりと広がる明かりで見えたのは、マスクをつけたまま寝息を立てているお母さんだった。

 ドアを閉めながらある思いがよぎる。

 じゃあ、さっきの騒音でも起きなかったってこと? そんなことあり得るか?

 あとは、お父さんの例の和室。ここを覗いて何もなかったら戻ろう。

 ふとさっきまで聞こえていたいびきが止んでいることに気がついた。起こしてしまったか?

©iStock.com

 そっと襖を開ける。

 和室の中央には布団が3つ敷いてあり、そこに人が3人寝ていた。

 Yさんは遠慮も忘れて携帯のライトをパッと照らした。

 Fさんたち親子3人がそこで寝ていた。

 静かに目を瞑るお父さん、マスクをしているお母さん、その間でじっとしているFさん。