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二軍監督時代から変わらない“選手育成”の考え方…高津臣吾監督が明かす“コーチとして失格”な人物の共通点とは

『一軍監督の仕事 育った彼らを勝たせたい』より #1

2022/05/05
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 問題は、次の「レイヤー」――次の層の選手たちだ。序盤で試合が崩れたときに登板するモップアップ、5回、6回という、試合がどちらに転ぶか分からない場面で登板する中継ぎの投手たち。2022年からは再び延長12回制に戻ることもあり、そこで安定した投球が出来れば、チャンスはさらに膨らむ。

 地位を確立した選手たちに対して、「俺がポジションを奪ってやる」という意欲をもって欲しい。僕はそれを求めているし、そうしたムードを作っていきたい。

「チャレンジ」枠の考え方

 イメージとしては「発芽」――芽が出てきた選手に対しては、広く機会を与え、新陳代謝を図ることが球団にとって大切だと理解している。ベテランに対して若手が挑んでいく構図を作ることがチームを活性化させ、競争力を生むからだ。それは2021年前半のタイガースを見ていてよく分かった。

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 僕としては「刺激」の機会を作りたい。ベンチに登録する選手のうち、何人かは「チャレンジ枠」的なものがあっていいと思っている。

 たとえば、僕が一軍監督に就任する前、2018年のシーズン終盤の村上の起用法がそれに当てはまる。翌年を見据え、村上を一軍の空気に触れさせることが目的だった。CS進出の可能性が断たれていたから出来たともいえるが、一軍・二軍が連携し、準備が整ったから実現したことでもあり、これが2019年からの村上のブレイクスルーにつながった。

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 この発想は、日本一になった2021年のシーズンでも続けていた。シーズンの中盤までは、ダグアウトのやりくりも考慮しながら、ルーキーで捕手の内山壮真をときどき一軍に上げて、打席に立たせたりしたのはそうした目的があったからだ。

 先発陣であれば、スワローズはローテーションの関係で、現状6人以上の駒が必要なので、いわゆる谷間のときに若い投手にチャンスを与えるのもやぶさかではない。そこでいい投球をすれば、他の先発投手にも大いに刺激になるはずだ。

 安定した結果を残すためには、ある程度メンバーを固定したい。固定したいのにチャレンジ枠を用意する、というのは矛盾した考えだとは承知している。それでも、新陳代謝を促していくのも中長期的なチーム作りには絶対必要であり、長いシーズンのなかで、そうした機会を作っていくつもりだ。

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