相手に対して素直になることが成長のきっかけに
僕が大切だと思っているのは、物事が理想通りに進まなかったときのマインドセットだ。
そういうとき、プロとしてどうするか?
ここで視点を変えるなり、コーチたちのアドバイスをうまく消化出来る能力があれば、チャンスは広がる。
僕のキャリアを見ても、間違いなくそう言える。野村監督からシンカーの習得を打診されたのは、2年目のシーズンが終わったときだった。もしも、自分が先発投手にこだわり、「シンカーなんか、自分には無理だろ」と思い込んでしまったら、まったく違ったキャリアを送ることになっていただろう。投手として、芽が出なかった可能性すらある。
自分の築いてきたものをいったん捨てて、監督やコーチの言葉を信じ、自分なりに努力すれば、成長のチャンスは大きく広がる。相手に対して素直になることは、成長のきっかけとなる。
2021年は塩見をはじめとする若手野手の頑張り、中村の成長によるバッテリー力の向上、投手陣では今野が7回を担ってくれるようになり、そうした新戦力の台頭が優勝に結びついたのは間違いない。なかには野村監督のことを想起してか、「再生工場」という言葉を使う記者の人もいる。
そう言ってもらえるのはありがたいが、ちょっとニュアンスが違うかなと思っている。2021年、本当の意味で再生したのは川端だけだと思う。彼も本当はプロとしてもっと出場機会が欲しいだろう。それでも、代打の切り札として活躍し、驚異的な成績を残してくれた。川端のケースは、本人の努力が実っての再生と呼ぶにふさわしい。
2021年に活躍した選手たちは、みんな成長したのだ。これはスワローズのフロント、コーチ陣が一丸となって選手たちから最大のパフォーマンスを引き出そうとし、選手がそれに応えてくれた結果に他ならない。
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