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現在主流のAIでの研究に挑戦するような気持ちはありますか?

――昔の棋士で好きな方はいますか?

服部 大山先生(康晴十五世名人)です。棋譜を並べたのですが、受けが本当に強い。ただ受けているだけじゃなくて、駒が入ったときのキレ味がすごいんです。飛車を振っても矢倉をやっても、どんな形でも急所がわかっている。並べていて惚れ惚れします。

――どれくらい並べたのですか?

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服部 大山全集の中から200局以上並べました。三段リーグ3期目の頃です。僕はその頃は攻めっ気が強くて、相手に余されて負けることも多かった。大山先生の将棋を勉強して、自分の将棋にバランスが備わりました。

――服部四段には昭和の棋士らしさを感じます。現在主流のAIでの研究に挑戦するような気持ちはありますか?

服部 挑戦、そんな意識はないです(笑)。関西では実戦での勉強が好きな若手が多いです。井田さんもそうで、力戦派で練習将棋をたくさん指しました。コロナ前は朝に仲間と集まって、一緒にランニングもしていました。

――AIを使うことはあるのですか?

服部 奨励会時代は、たまに自分の将棋で気になったところをソフトにかけるくらいでした。今も自分の指した将棋を検討するくらいで、それほど使っていないです。ただ、コロナ禍での実戦不足を補うために、今後は比重が増えていくかもしれません。

 

――ソフトでの研究をメインにしている棋士を強いと感じますか?

服部 いやあ、なんというか、強いというより……。表現が難しいですね。10代でも使いこなすのは大変で、自力が必要です。使いすぎて自信をうしなう人もいる。ベテランの方が途中から始めると、対応していくのはより難しいかもしれません。長年の感覚を新しくするのは大変ですから。

――藤井竜王の場合はどうでしょうか?

服部 藤井さんは本当に将棋が好きで、研究という感じではないのでは。好きで見ている、勝つためというよりも最善への探究というか。そこが違うように思います。

――人の真似でない将棋が指したいと言われていますが、佐藤康光九段(将棋連盟会長)の将棋をどう感じますか?

服部 ロマン溢れる感じで、すごい好きですね。本当に腕力が強くて、1分将棋に入っても間違えない。佐藤会長は20代、30代の凄まじい土台があるからできるのですが、今の僕が会長のような将棋を指そうとしたら崩壊するでしょう。あれは相当な力がないとできません。

――若手のときに盤の底まで考えた経験は、40代、50代になって影響してくると思いますか?

服部 羽生世代を見ているとそう感じますね。20代の頃の研究会、実戦で最後の最後まで粘ったり、残り1分までふり絞って頑張った経験は、財産になると思います。