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 近年では『三億円事件奇譚 モンタージュ』(渡辺潤)や『クロコーチ』(原作:リチャード・ウー、作画:コウノコウジ)が本事件を題材にし、それぞれテレビドラマ化されている。三億円事件は死傷者が出ていない点から、被害者に配慮する必要がなく、フィクションに用いやすいのだろう。

『こち亀』『キン肉マン』…ジャンプ作品にも“縁がある”「グリコ・森永事件」

 1984年3月18日の江崎グリコ社長誘拐に端を発し、複数の食品会社が次々と脅迫を受けた事件。「かい人21面相」を名乗る犯人から企業に脅迫状が届けられただけでなく、マスメディアにも犯行声明が送付された劇場型犯罪で、青酸を混入した菓子が小売店にばら撒かれた。1985年8月12日に犯人から終結宣言が出されるまで、江崎グリコ、丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二家、駿河屋が脅迫された。2000年2月13日に公訴時効が成立。

誘拐された江崎グリコの江崎勝久社長(当時)

 1話完結スタイルのギャグマンガは、リアルタイムで起きた事件を作品に反映させやすい。1976年に連載を開始した国民的ギャグマンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治)は、その時々のトレンドを題材にしてきた作品で、実はグリコ・森永事件にも反応している。

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「週刊少年ジャンプ」1984年49号(11月19日号)に掲載された「人生は夢のごとく…の巻」(コミックス42巻収録)では、作中で大原部長が読んでいる新聞の見出しに「32面相今度は毒入り漫画を!」と書かれているのだ。

 本エピソードが掲載されたのは、まさに森永製菓が脅迫されていた最中。同年9月12日に森永製菓関西販売本部に脅迫状が届き、10月には青酸の混入した森永製菓の菓子が次々と発見されていた状況だ。現在だったら「不謹慎」と炎上しかねない、かなり“攻めた”仕込みといえる。

 ちなみに、同じく「週刊少年ジャンプ」で森永製菓と縁の深い作品といえば『キン肉マン』で、最初期は「ポテロング」「エンゼルパイ」「森永ココア」などの森永製品が作中に登場している。