フランス人作家にも描かれた「オウム真理教事件」と「MATSUMOTO」
1980年代後半から1990年代中盤にかけて、新興宗教団体「オウム真理教」が引き起こした地下鉄サリン事件、松本サリン事件、坂本堤弁護士一家殺害事件などの一連の凶悪事件の総称。判明しているだけでも死者は29名、負傷者は6000名を超える。2018年に教祖を含む13名の死刑が執行された。
松本サリン事件から地下鉄サリン事件発生までを題材にしたのが『MATSUMOTO』(LF・ボレ、フィリップ・ニクルー/原正人訳)である。末端信者・カムイの目を通じて、暴走するカルト教団の異常性がフィクションとして描かれる。
本作はフランス人作家によるバンド・デシネ(フランスやベルギーでのコミックスタイル)であり、2017年には日本語にも翻訳された。大都市圏での化学兵器による無差別テロ事件は世界中を震撼させ、海外の創作者にも多大なインパクトを与えたようだ。
女子高生コンクリート殺人事件、世田谷一家殺人事件、そして“上級国民”…マンガと時代を“その後”から読むと…
実際に起きた凶悪事件や未解決事件をテーマにした作品は、近年ではノンフィクション(実録犯罪モノ含む)か、犯罪者に復讐する“現代版『必殺仕事人』”形式の作品が多い。後者の例としては『善悪の屑』シリーズ(渡邊ダイスケ)や、『怨み屋本舗』シリーズ(栗原正尚)などが挙げられる。
『善悪の屑』シリーズでは女子高生コンクリート詰め殺人事件や世田谷一家殺人事件をモデルにした事件が登場し、『怨み屋本舗』の最新シリーズ『怨み屋本舗WORST』(第6部相当)には、すれ違いざまに肩アタックをしてくる「ぶつかり屋」、人気者への嫌がらせをして信者を集める「迷惑チューバー」、孫娘の起こした交通事故を揉み消そうとする元検察幹部の「上級国民」などが登場する。
事件を扱った作品には、その時代の世相が反映されやすい。マンガを通じて、世間がその事件をどう受け止めてきたのかを追体験してみてはいかがだろうか。