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バカボンパパとイヤミがジュラルミンのトランクを発見!?「三億円事件」

 1968年12月10日、東京都府中市で現金約3億円を積んだ現金輸送車が、白バイ警官に扮した犯人に強奪された。124点に及ぶ大量の遺留品がありながら捜査は難航し、1975年12月10日に公訴時効が成立した。

三億円事件の捜査本部定例会議の様子 ©文藝春秋

 本件は、日本を代表する劇場型犯罪である。メディアが大々的に報じたことで、さながら映画や演劇を観るような感覚で日本中が熱狂した。こうしたセンセーショナルな事件に、マンガ家が飛びつかないわけがない。

 事件発生から4カ月後の1969年4月9日、犯人が現金輸送車から逃走用に乗り換えた車と、現金を抜き取られて空になったジュラルミンケースが東京都小金井市本町の団地敷地内の駐車場で発見された。

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公開された三億円事件犯人のモンタージュ

 こうした「事件の新展開」を受けて、希代のギャグ作家・赤塚不二夫が反応した。「週刊少年サンデー」(小学館)1969年21号(5月18日号)に掲載された『ア太郎+おそ松』(副題「いまにみていろミーだって」)は、赤塚作品のさまざまなキャラが勢揃いするオールスター作品で、バカボンのパパとイヤミが親子という設定。バカボンパパとイヤミは「四億円事件」の犯人が乗り捨てた車からジュラルミンのトランクを発見して大騒動となる。

 また、「ひとりの著者が描いたコミックの出版作品数が世界でもっとも多い」とされ、ギネス世界記録に認定された石ノ森章太郎も同事件に反応した作家のひとりだ。

 事件発生から2年後、犯人が乗り捨てた偽白バイに装着されていたトランジスタメガホンに付着していた紙片が「産経新聞」(1968年12月6日付)の一部であることが判明したものの、購読者を示す順路帳はすでに破棄されており、事件の「迷宮入り」が示唆された。

 すると石森章太郎(当時)は「中一時代」(旺文社)1971年1月号にわずか4ページの短編『サイボーグ009対三億円犯人』を執筆。009が加速装置で犯人の居場所を突き止め、犯人に「その才能をもっとデカイいいことに使え!!」と説教をするのだ。

 犯人が「中一時代」を読んでいるとは考えられないが、石ノ森は作品を通じて未来ある少年たちに明確なメッセージを伝えたかったように思われる。