これは「森永製菓の重役さんがボクたちの『キン肉マン』を気に入ってくれて、作中に一コマ出すだけで、1週につき、5万円を出してくれることになったのだ」(ゆでたまご『ゆでたまごのリアル超人伝説』宝島社新書)とのことで、今風に言えば「プロダクトプレイスメント」の手法に近いのかもしれない。森永製菓はその縁で『キン肉マン』がアニメ化の際にはスポンサーとなるが、グリコ・森永事件を機に降板せざるをえなくなってしまった。
このグリコ・森永事件も根強い“人気”のある未解決事件で、本件を題材にしたサスペンス小説『罪の声』(塩田武士)は2016年度週刊文春ミステリーベスト10で国内部門1位に選出。2017年には須本壮一の作画でコミカライズされ、2020年には小栗旬主演で実写映画化されたのも記憶にあたらしい。
時代は昭和の終わりから平成へ…「宮崎勤事件」
1988年8月から12月にかけて、埼玉県南西部から東京都北西部にかけての地域で連続発生した幼女を対象とした誘拐殺人事件。1989年7月23日に幼女に対するわいせつ事件で現行犯逮捕された宮崎勤が連続殺人事件を自供。
事件発生当初からメディアによる報道合戦が繰り広げられ、この事件を契機として「オタク・バッシング」が起きた。また、日本で初めて複数の鑑定医による精神鑑定が行われ、精神鑑定が大きくクローズアップされたことでも知られる。
少女マンガ界のレジェンド・山岸凉子(『アラベスク』や『日出処の天子』など)は、実際の事件をモデルにした短編をいくつか手がけており、たとえば「津山三十人殺し」を題材にした『負の暗示』などがある。そして東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件に着想を得たと思われるのが、「YOU-all」(集英社)1990年VOL.3(7月25日号)に掲載された『パイド・パイパー』だ。
主人公・道子は夫の転勤にともない、子供の頃に住んでいたM市に引っ越してくると、市内の河原で児童の遺体が発見された。幼少時に妹が誘拐され殺害された際には、犯人が捕まっていたはずなのに、なぜ同じ場所で似たような事件が起きるのか不審に思っていると、今度は自分の子供が誘拐されてしまう。
少女マンガは心理描写に長けた表現手法が用いられるジャンルで、そうした表現手法でシリアルキラーの心理に迫るサイコ・サスペンスに戦慄させられること必至。まだ事件の記憶が生々しい時期に描かれたことも驚嘆に値する。