本番の心得
さやか 本番前に坪田先生から教えてもらったのが、書き出す前に問題用紙の裏に全体の構成を書くこと。大きな見出しを書いて、どの箇所にどんな項目を入れるかを書き、肉付けしていくというやり方です。いわば小論文の設計図ですね。その作業をして、全体の構成が見えてから書いていました。だって、チョー怖くないですか? いきなり書き始めて、「あれ書けば良かった」と気づいて、またアタマから書き直すなんて。メッチャ時間との戦いなんで、そんな怖いこと、私にはできなかった。
総合政策学部の小論文は、世論がテーマでした。メッチャ長い課題文を読まされたあとに2問あって、1つは「要約しなさい」。もう1つは「あなたはこれを踏まえて、世論をどう思いますか」。
坪田 試験の直前に、たまたまライブドア事件の話をしてたんだよね。
さやか 1週間前ぐらいですよ。雑談だったんですけど、「ホリエモンをどう思う?」って聞かれて、「いや、悪い人でしょ」と答えた会話を、本番の試験のときにパッと思い出したんです。最初はもてはやされたのに、その後はバッシングの嵐って、つまり移ろいやすく変わりやすい世論の話だなと思って。すごくすんなり書けました。
書きながら「勝った、これは受かったな」と思いました。『論点』を抜かりなく、全部とは言わないまでも全分野やっておくと、何が問題に出ても使える知識は身につくと思います。それからこの本に論文を書いているような頭のいい人たちを論破できたっていう事実は、すごく自信になりました。
本番の極意
◎問題用紙の裏に全体の構成を書き、それを固めてから書き出す。
社会に出ても役に立つ
さやか 慶應に入ってからは、レポートがすごく早かった。2000字なんて、誰よりも早く余裕で書けました。みんな必死で1日かけてるのに、私は2時間でピッと書いて出せる。しかもクオリティーが高い。大学に入ってから初めて、レポートに関しては自分は人よりできるんだって気づいたんです。やっぱりポイントは要約。小論文の練習のおかげです。
坪田 ビジネスにも効くはずですよ。商談の報告書も企画書も結局は色々な情報を適確に要約することですから。
さやか 私は卒業してから、ブライダルの会社でウェデイング・プランナーとして働いてるんですが、同感です。
坪田 僕はいつも思うんですが、子どもたちって本当に知識がない。だから、簡単にだまされると思うんですよ。悪い人にも国家権力にも。
消費税の仕組みを知らないと、いつどれぐらい取られているか、何に使われているかもわからない。
まず知識がないってこと、知らないってことが、一番問題なんです。だから少しでも知識を得て、自分の意見を持って、自分を守らなければいけない。そのためには多面的なものの見方が必要で、それを身に付けるためにも『論点』は役に立つはずです。世の中で一番問題になってることや、自分たちの生活を左右することに関する知識が得られるし、自分で考える力も養えるからです。
だから大学受験を乗り越えたあとも、この『論点』を毎年、読み続けてほしいですね。
さやか いまの仕事にも役立ってますよ、私。反省文とか、メッチャ上手。
坪田 必ずオチつけるよね(笑)。せっかくいい話してるのに……。
ビジネスにも効く『論点』
(1)「要約力」がレポート、報告書、企画書などに役立つ。
(2)多面的なものの見方を身に付けられる→ダマされない大人に。
取材・構成:石井 謙一郎