葬儀後に豹変した美代子
尼崎市内で行われた小春さんの通夜には、角田家から美代子と、彼女の戸籍上の妹である角田三枝子(姓は当時、懲役21年)がやって来た。
通夜ではおとなしくしていた美代子が、豹変した姿を見せたのは、葬儀が終わってからのこと。
小春さんも光江さんも、大嶋家(仮名)からそれぞれ角田家、東条家へと嫁いでいる。小春さんと光江さんの弟で、大嶋家を継いだ大嶋也一さん(仮名)の息子である大嶋宏一郎さん(仮名)は、当時の状況を説明する。
「美代子はまず小春さんの葬儀を大嶋家で出したことに文句をつけ、『小春のおばさんは角田の姓で死んでる。本来なら(美代子の伯父である)角田寅雄(仮名)が喪主になるべきや』と言いました。それから葬儀の段取りの悪さや、親父(大嶋也一さん)が葬儀代金を銀行から引き出し忘れていたんで、美代子が立て替えていたことやら聞きました。ほんで、『お前の親父は角田姓の小春おばさんの遺骨を、大嶋の墓に入れる言うとる』と責められました。美代子の話を聞いて、そのときはたしかにこっちが筋違いやと思いました。美代子は私に対して、今日は一旦帰り、親父を説得して改めて答えを持ってくるように言いましたわ。『あんた、答えの出し方を間違えたらあかんで』言うてね」
『あんたらの母親には昔、酷い目に遭わされた』
そこから美代子は徐々に大嶋家、東条家に侵食していく。その根源は、美代子がかつて自身の母親のことで、小春さんと光江さんに屈辱的な発言をされ、恨みを抱き続けていたことにあった。宏一郎さんは言う。
「美代子は自分が二人を嫌っている理由を口にしましたわ。『小春と光江がな、私のオカンの悪口を近所で言いふらしよってな、おかげで私が小さい頃、生活に困ったんや』いう話でした。光江さんはちょっと口の悪いところがあったんですわ。そんで東条兄弟の嫁連中とは折り合いが悪く、それぞれの家をたらい回しにされて三郎(仮名、光江さんの3男)のところにおったんです。そういう関係やったから、美代子は東条兄弟と光江さんを集めた場で、『あんたらの母親には昔、酷い目に遭わされた』いう過去の話をして、『このオバハン(光江さん)をお前らでなんとかせえ』と迫りよったんです」
さすがに実母のことであるため、4人の息子は何も言えない。そこで美代子は彼らに対して、それぞれの妻を呼び寄せるように命じたのだ。以下、わかりやすくするため、東条家の長男を一郎さん、次男を二郎さんとし、彼らの妻をそれぞれ一子さん、二子さんとする。なお、三郎さんは離婚しており、妻はいない。念のため説明を加えると、賢吾さんの母親は四子さんである。