『オカンはお前らを捨てたんや』
宏一郎さんによれば、集団生活が辛くなり、四子さんが逃げ出したことがあったという。その際は美代子と宏一郎さん、一子さん、二子さん、賢吾さんで大阪市の梅田に彼女を探しに出かけ、偶然発見して西宮市に連れ帰っている。
「あとで四子がどういう罰を受けたかは知りません。ただ、逃げ出したことがわかったとき、美代子は彼女の息子である賢吾と徹也に『オカンはお前らを捨てたんや』みたいなことをしきりと囁いてましたわ」
それから間もなくして、今度は賢吾さんが車に乗って逃走した。宏一郎さんが明かす。
「結論から言うと、賢吾は大阪の枚方市にある知り合いのところで働いてるのがわかって連れ戻されたんですけど、なんでわかったかというと、クレジットカードの請求書やったんです。カードで車のパーツを買い、その請求書が届いてどこの店で買い物をしたかがわかった。ほんで、その近辺におる賢吾の知り合いは誰やいうことで、割り出されたんです。そんとき、賢吾を匿っとった親方は、当初は『なんも知らん』と言い張っとったんですけど、美代子が自宅マンションの前に居座って長時間ギャーギャー責め立てるもんで、しまいには根負けして賢吾を呼び出し、彼も諦めて連れ帰られました」
先方が住んでいるマンションの前で2時間以上にわたって賢吾さんを返せと騒ぎ立て、警察も出動するような騒ぎになったそうだ。
実の息子を殴るよう命じられ
賢吾さんを連れ帰った美代子は、今度は宏一郎さんに対して彼を殴るように命じている。
「賢吾を私の前に連れてきて、(殴られたことの)『仕返しせえや』と言われました。せやけど相手は子供やないですか。私は『そんなんようしませんわ』言うて断りました」
やがて美代子らによる監禁生活からの脱却を考えた宏一郎さんは、刑事事件を起こして警察に駆け込むしかないと考えた。そこで美代子に、夜間無人になる保冷倉庫からの窃盗を提案。美代子も乗り気だったため、宏一郎さんは二郎さんや賢吾さんらとともに実行し、野菜類や輸出用のタバコなどを盗んでいる。