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 上田女流四段は5回も参加、最終6回は女流名人のタイトル戦に出場するため来られなかった。そのときはそれまでの感謝も込めて、参加の子どもも大人も「上田先生の勝利を祈って」念力を送ったという(その対局に勝利)。

 勝又七段は、合宿への参加は4回だったものの、毎回のように「子どもたちの賞品に」と本などを贈呈。一度は、ロマンスカーに乗って合宿会場に向かう一行を途中の町田駅のホームで待ち、詰将棋を手書きした団扇と差し入れを手渡してくれたことも。

合宿には毎回プロ棋士が参加した。左は戸辺誠七段、中央は小2の伊藤匠五段(写真提供・宮澤春彦さん)

 しかし、当時小3だった匠少年。物への執着もないし、プロの先生が手書きしてくれたものはありがたいという感覚にも乏しかった。

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 先日参加した親子将棋合宿(この件はまだブログで触れていないが)の詰将棋大会の賞品でいただいた勝又先生直筆の詰将棋付き団扇。これなんかは、他所で手に入らないものだし、勝又先生がわざわざ合宿に向かうロマンスカーに届けてくれたファン垂涎の一品モノのはず。それを「もう解けた」といって、その場で友だちに譲ってしまう感覚。こちらも私には理解不能だ。

(2011年7月・小3)

チーム「鰻」の一員として社団戦に挑む

 合宿仲間の一部を中心にして、別の活動も始まった。鰻支部という支部活動だ。

 日本将棋連盟には全国津々浦々に将棋愛好家で作る支部があり、集まって将棋を指したり、プロ棋士を招いて指導対局を受けたり、大会を開いたりしている。地名や会社名を付ける支部が多いけれど、職場や居住地が一緒である必要はまったくなく、好きな支部名を付けてよい。

鰻支部の仲間が開いてくれた四段昇段祝いでの伊藤雅浩さんと匠新四段(写真提供・あすなろ組)

 パパ仲間の1人で、息子同士は同級生で仲良しという橋本茂さん(息子の橋本力さんは、「読む将棋2022」の川島滉生さんインタビューに登場している)は鰻が大好物で、「鰻支部を作る」と仲間を誘ったのだ。師範は戸辺誠七段が引き受けてくれた(師範がいなくても支部を作ることはできる)。橋本さんと副支部長になった雅浩さんは、合宿の縁もあり支部で応援すると決めた上田女流四段の女王就位式に招かれたこともあった。

 私は名ばかりの「副支部長」なのだが、こういうときだけ役得をさせてもらった。会場には、当たり前だが棋士、女流棋士が大勢。谷川先生(浩司九段)、藤井先生(猛九段)らが近くを通るだけで緊張してしまう。やっぱり場違いだったのかななどと感じたりもする。
 

 来賓スピーチやカップ・賞金の授与式の後、上田先生の謝辞では「第2局の午前中、悪い局面になってしまったところで、昼食に鰻支部から鰻の差し入れを頂き、午後からは、鰻パワーで逆転勝ちすることができました……」などと気を使っていただいた。それにしてもプロ棋士は、独特の世界で育っていくとはいえ、若くてもみんなしっかりしていて、話が上手。

(2011年7月・小3)

 この時の雅浩さん、ちょうど10年後には我が子がプロになっている上に新人王戦で優勝して金屏風の前で表彰され、参列した自分までもが新聞社のインタビューを受けることになるとは思ってもみなかった。

 鰻支部の活動で、雅浩さんにとって大きかったのが社団戦への参加だ。匠少年は小3のとき、初めて「社団戦」に参加した。「社会人団体リーグ戦」が正式名称だけれど、社会人でなくても誰でも参加でき、小学生~大学生も多数参加している。7人制の団体戦で6~10月にかけて5回、リーグ戦形式で行われる。