このwRC+で1918年のルースはメジャー1位の189を記録した。同年の平均打者より89パーセントも多くの得点を生み出したということだ。2021年の大谷のwRC+は、メジャー5位の152だった。
打者としてはルース、投手としては大谷が上
投球に関しても、その年のメジャー平均に比べて、どれだけ防御率が優れているかを示すERA+という指標がある。wRC+と同じく、球場やリーグの違いを計算に入れている。
1918年のルースのERA+は、平均投手よりも22パーセント優れている122(メジャー14位)。2021年の大谷は、平均投手よりも41パーセント優れている141(130イニング以上投げている中で15位)だった。
1918年と2021年に限っていえば、打者としてはルースが上で、投手としては大谷が上だったと言える。
ルースのWARを見てみると、Baseball Referenceでは全体6位の7.0(野手4.7、投手2.3)、FanGraphsでは2位の6.7(野手5.2、投手1.5)となっている。短縮シーズンだったので単純に大谷の数字とは比べられないが、勝利への貢献度では大谷のように球界一ではなかった。
大谷自身もピンと来ていない
当の大谷はよく比較されるルースについてどう思っているのか。アメリカや日本の記者から幾度となく尋ねられているが、昔の人すぎてピンと来ていないようだ。
「よく比較していただいてはいるんですけど、個人的には神話の中のそういう人物だろうなと思うくらい現実から離れている存在だと思うので、なかなか自分で意識することというのはない」と2018年のシーズン後に語っている。
二刀流は短命に終わったが、ルースは打者に専念してからも、球史に残る成績を残した。
1919年は、投手を続けながら、シーズン最多記録を塗り替える29本のホームランを放つ。ヤンキースに移籍した1920年には、なんと他15球団中14球団の本塁打数を上回る54本塁打を打った。1918年から1931年までの14シーズンで、13度、ア・リーグトップのOPSを記録。通算714本塁打は、1974年にハンク・アーロンに抜かれるまで最多だった。通算wRC+は197で歴代1位である。
ワールドシリーズ制覇も、レッドソックスで3度、ヤンキースで4度、経験している。
通算WARでも、ルースは堂々の1位。もはや「チートキャラ」である。