現代アート界を席巻する稀代のアート・コレクティブChim↑Pom from Smappa!Groupは現在、東京六本木の森美術館で大規模個展「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」を開催中。追いかけるようにして無人島プロダクション、ANOMALYと都内のふたつのギャラリーでも個展が幕開けした。
この4月27日には改名することを発表し、今後は「Chim↑Pom」改め「Chim↑Pom from Smappa!Group」との呼称で活動していくという。
なんとも話題豊富なところに加え、メンバーのエリイは先般、著書『はい、こんにちは』を刊行した。2019年7月から2021年2月まで文芸誌に連載したエッセイをまとめたもので、アーティストとしてまたひとりの人間としての行動と考えを事細かく披瀝している。
ご本人に、本書にまつわる「生活と意見」を聞いた。
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記憶のエピソードが球体になって目の前を浮かぶんです
産まれたし、産んだ。予定日を超過し6日目の日曜14時、波のある痛みで起きた。おしるしというピンク色の粘った液体も出た。
(『はい、こんにちは』)
ーー2005年のChim↑Pom結成以来、多様なかたちの表現を発表してきたエリイさんですが、個人で本を出したのは初めて。文章でこそ表せる何かがあると思ったからこそ、筆をとったのでしょうか?
「『Chim↑Pomエリイの生活と意見』というサブタイトルが付いているんですけど、内容はそれに沿ったものかと。日常で木を見たり財布を忘れたりしたことを、お風呂とかに浸かりながら『さっきあんなことあったなあ』とぼんやりしていると、その記憶がわたしの場合は、立体物として脳内に立ち現れてくる。記憶のエピソードが物体になって目の前に浮かぶんです。
わたしはその構築物を何度も、しげしげと眺め渡します。くるくる回したり、横にしたり、あらゆる角度から。眺めて印象を捉えた感触を、いつもは心の内にしまっておくだけだけど、今回は文章に落とし込みました。
頭の中の立体物を言葉にしていくのは、ちょうど通貨を両替するみたいな感覚でおもしろい。店先のカウンターでレート表を見ながら紙幣を差し出して、今日は上がってるのかな下がってるのかなと思いながら両替する。チェンジして受け取った紙幣がすなわち言葉、みたいなイメージがわたしの中にはありますね」