「いや、物件を探してたんですよ。それで資金が500万ぐらいしかなかったのかな。本当は蒲田とか、品川、大井町のほうが好きだったから、蒲田とか鶴見で探したんだけど、やっぱり高いんですよね、向こうは。家賃はちょっと高いぐらいだけど、保証金が高くて」
大井町のあと中野に引っ越したこともあり、中央線にも惹かれた。とはいえJR沿線も高くて手が出ない。
「それでいろいろ探したら、昔あった店舗情報雑誌にここが安く載ってたんですね、ちょうど。私鉄沿線は物件が安くて、当時はまだ大江戸線も(全線)開通してなかったから。だから穴場といえば穴場だったですね」
「ラーメンガッツ」の名前の由来は?
縁のない土地だったわけだが、暮らしてみれば街の温かみに無理なく馴染んでいった。ところで、印象的な店名の由来はなんなのだろう?
「歌が流行ってたんですよ、(ウルフルズの)『ガッツだぜ!!』という(笑)。あの年にできたので。あんまり歌は意味ないんですが、ガッツがちょうどね」
意外とライトな由来である。なお、ガッツ石松さんの事務所も近いということで関係を聞かれることも少なくなかったというが、当然ながら関係はない。いずれにしても、黒いカウンターが80~90年代の雰囲気を感じさせるのは、そんな時代に開店した店だったからなのだった。
とはいえ、先述した2本ののれんはあまり時代とは関係なさそうだ。だとすれば、なぜああいうことになったのか?
「いや、合うのれんがなくて。けっこう間口広いから。2間(けん)分ののれんはないので、前はでかいのを特注で作ってたんですよ。でも、それも古くなったので捨てて。だから新しいのを探したんですけど、のれん屋ももう数少ないし、ないんですよ。
だから、のれんを2つにしようと思ったんですけど、『ラーメン・ラーメン』もおかしいしね。それじゃあ、『ラーメン・食事』にしようって」
と、こちらも事情はシンプル。だが、色合いはお気に入りのようだ。