「天ぷらそば」は、なつかしい昭和の味
久しぶりに「天ぷらそば」470円をいただいた。つゆは赤く奇麗な紫色で確かに濃い目だ。つゆをひとくち。出汁の香りがぐんと伝わってくる。そばとの相性もなかなかよい。そして、このコロモの多めの天ぷらもなつかしい。横浜駅すぐにある立ち食いそば屋「鈴一」がかつて仕入れていたのと同じ天ぷらだと思う。何となく味の構成が似ている。本当になつかしい味である。
楽しかったのはお客さんに会えること
草野さんに店を続けてきて「楽しかったこと」を訊いてみた。草野さんはお客さんに対応することがとにかく好きだったそうだ。お客さんの顔をみると自然と笑顔になれるという。さすが寿司屋の娘である。
「お客さんとのやりとり、ちょっとした会話が楽しくてたまらなくて、今日はどんなお客さんが来るかなあとわくわくしていた」という。
「ある時店にいたら、俳優の赤井英和さんが横断歩道の向こう側にいらっしゃることに気が付いて、そしたらそのまま店に入って来て、びっくりしちゃったこともあったのよ」と草野さん。赤井英和さんは立ち食いそばの大ファンだそうである。
「あと毎日来るような常連さんが調子悪い時はすぐ分かるの。早く帰って寝なさいといってあげるの」
それと今はもう1つ楽しいことがあるという。
それは何十年ぶりに当時の常連だった学生さんやサラリーマンが立派な大人になって、顔を出してくれることだという。最近もそんな昔の常連さんが来てくれたという。
「女将、まだ立ち食いそば屋やってんのか! 久しぶりだねえ、とかいうのよ。失礼でしょ。でも何となく時間を共有できているみたいな気がしてステキなの。みんながんばって生きてきたんだなって」
辛かったことは、バブル崩壊とバイク事故
草野さんに「辛かったこと」も訊いてみた。店の所有地はバブル時には相当転売の圧力があったそうだが、それにも耐えて続けてきたのに、その後のバブル崩壊で近隣の住人がいなくなったことだと草野さんはしみじみいう。
あと、数年前に北海道で大型バイクに乗車中事故に遭い、ドクターヘリで搬送されて、九死に一生を得たことだという。