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「腹話術を『教えたくない』という気持ちがありました」いっこく堂(59)が明かす「弟子入り」を断り続けるワケ

腹話術師・いっこく堂さんインタビュー #2

2022/06/07

genre : エンタメ, 芸能

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「衛星中継」は絶対に教えたくなかった

――ここ最近はテレビ出演が少なくなっているような気がしますが、これは意図的に?

いっこく堂 いえいえ、そんなことは。オファーを頂いたら、大喜びで出させてもらいますよ。選べる立場じゃないですから。テレビに出ることで、ステージにもお客さんが来てくれますし、集客力に影響するんです。ほんと、オファーが単純に減っただけです。

 

――コロナでステージが減って、なにもない状態と仰っていました。それでも、「リモート会議」の動画がバズったことで、良い影響はありませんでしたか。

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いっこく堂 それが理由かわからないけれど、テレビ出演のオファーは何本か来ました。それから最近は、腹話術を教えてくださいという依頼が多いです。

 ブレイクしたての頃は、「教えたくない」という気持ちがあったんですよ。僕よりうまい人が現れたらどうしようって。それから30年経ちまして、もう逆に、新しい才能が出てきて欲しい、コラボしたらどんなことができるんだろうっていう期待に変わってきて。昔は「衛星中継」のやり方なんて絶対に教えたくなかったのに、いまではYouTubeで率先して教えていますから。

弟子入りを断るわけ

――後継者を育てたいとは思いませんか?

いっこく堂 矛盾するかもしれないですけど、それはないですね。才能がある人は師匠なんかいらないし、下手に枠にはめられてしまう可能性だってある。僕自身も師匠につかず、独学でやってきました。自分で自由に考えたかったんですね。だから、僕の芸を見て、「この部分を膨らませたら面白いかも」なんて考えられる人が出てきたら、まったく新しい腹話術が生まれるんじゃないかな。

 

――いっこく堂さんが腹話術のイメージやテクニックをガラリと変えてしまっただけに、これから新しい人が飛び出すにはハードルが高すぎる気がしなくもないですが。

いっこく堂 どんなジャンルにおいても、できる人はできる、興味を持っている人はやれると思うんです。だから、数年後に出てこなくても、10年後、20年後には、僕とは違う形の面白い人が出てくると思っているんで。

 これまで弟子にしてくださいと言ってくれた方は大勢いましたけど、すべてお断りしてきました。僕の真似をしてどうするんだというのもありますし、もっと自由な発想で作り上げた方がいいと思っているんです。「これ腹話術なの?」っていうようなものが出てきた方がいいんですよ。