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四国では「お遍路のために四国を一周」というキャラで

――どんどん自転車旅をするキャラを作り込んでいきますね。

高橋 本州から四国に渡ると、今度は「お遍路のために四国を一周している」キャラも付けくわえます。大胆にも山本は愛媛県庁に行き、職員から「日本一周中」と書かれたプレートとサイクリングマップをもらって小道具も揃えていきました。11日間で四国を一周して愛媛にもどってくると、ふたたび県庁を訪れて「道中でおもてなしを受けました」などと職員に報告までしています。

©️iStock.com

――その後、瀬戸内の周防大島(山口県大島郡)に渡りますが、離島は袋小路に入りこむようなものなのに、そこに長く滞在しますね。

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高橋 それまで移動し続けていた山本ですが、この島には9日間も滞在することになります。自転車旅行者という偽りの設定なので、日本一周をしているのなら同じところに何泊もするはずもないですが、怪しまれることもなく、海で釣った魚を食べたり、草むしりを手伝ったりして島に馴染んでいた。

脱走中の記念写真がまさかの“町おこし”に

「只今、自転車にて 日本縦断中!」と書かれたプレートを持つ山本の記念写真が、逮捕後にニュースで頻繁に放映されましたが、あれはこの島の道の駅で撮影されたものです。このプレートを持った第一号も山本でした。

――これがおもわぬ“町おこし”につながっていきますね。

高橋 逮捕後にこの島に取材にいくと、事件のニュースの影響でサイクリストたちの“聖地”みたいになっていました。「日本縦断中!」のプレートを持って記念写真を撮る人が大勢いたそうです。山本はこの島を出たあと、上関町の道の駅で野宿したのですが、ここでは、たこめしを万引きしたと報道されたことから、「これがあのたこめしか」と買いに来る人がいたりして、結構売れたと言っていましたね。

――強制わいせつや強盗傷害の罪に問われていたので凶悪犯とも言えようかと思います。なのに、その深刻さはない印象です。

高橋 地元の話題として、住人の皆さんがものすごく盛り上がった痕跡が見えるんですよね。私が事件の取材に来たというと、「誰々さんが山本と話したことある」といって、人づてに紹介してもらったこともあります。山本は山本で、出発する前に道の駅の支配人に感謝の手紙を置いていった。この島の人や自然に魅了されたことだけは本当だったのかなと思いますね。