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「先生がいなかったら今、自分はいない」強制わいせつで逮捕され命を絶った練馬中学教師「本当の顔」

葬儀では泣き崩れる生徒も

source : 週刊文春

genre : ニュース, 社会

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「みんなで『先生、大丈夫?』って」

 報道を受けて、ネット上には石井容疑者の身元や所属中学などを特定するいわゆる「まとめサイト」が次々立ち上がる。だが、生徒たちの受け止めは異なるものだった。逮捕後にも複数の生徒や保護者が心境を気遣う電話やメッセージを石井容疑者の携帯に寄せていたという。

「みんなで『先生、大丈夫?』って。先生から返信はなかったけど、後から聞いたら捜査のために警察に携帯を取り上げられていたから、みんなからの着信もメッセージも見られていなかったみたいで。先生のことを信じる気持ちは一切揺るがなかったけど、逮捕された以上は教師を続けられないかもしれない。『今度は俺たちが先生を助けよう』って話していた矢先の出来事でした」(別の元教え子)

 石井容疑者はいまどきには珍しい「昭和の熱血教師のような」先生だったと、生徒たちは口々に回顧する。高校の頃に教壇に立つ夢を抱き、都内私立大学で英語の教員免許を取得。都の中学教諭となり、5年以上務めた前任校を後にし、A中学へは昨年4月に異動。前任校の元生徒が語る。

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「一体いつ寝てるんだろう? と思うくらい、24時間、365日生徒のために尽くしてくれました。英語の授業についていけない生徒がいれば、補習をしたり、個別の課題を出してくれたり。部活ではサッカー部の他にダンス部も兼務していました。進路指導の担当もしていたので、推薦を獲得するために高校に熱心に説明に行ってくれたり、学校見学に一緒に行ってくれたこともあった」

 近隣住民によれば、石井容疑者の自宅には、休みになると毎週のように大勢の生徒たちが自転車に乗って集まってきたという。

「避難所みたいな大切な場所でした。親との折り合いが微妙だった子は毎日のように先生の家に泊らせてもらっていました。お母さんも『先生の家なら安心』と了解の上で」(別の元生徒)

 愛車に生徒たちを乗せてお台場や江の島にドライブすることもある一方、泣きながら叱るような厳しさも見せていた。

「一度、部活も勉強もうまくいかず腐りそうになっていた僕に、『お前、そんなんでいいのかよ!』って本気で泣きながら叱ってくれたことがあって。家に遊びに行った時も、ダメなものはダメ。怒るとちゃんと怖いから、先生の授業にはいい緊張感が漂っていた。周りにも『先生がいなかったら自分はいまここにいない』そう言う生徒がたくさんいます」(前出の元生徒)

 生徒との関係は、A中学に赴任してからも変わらなかった。談笑し、じゃれ合う見慣れた風景――他の男子生徒と同様に、被害者となった男子生徒とも肩を組んで廊下を歩く姿が過去に目撃されていたという。

 信頼関係があったはずの生徒と教師はなぜ被害者と加害者になってしまったのか。そんな疑問が今、生徒や保護者、校内に渦巻いていると学校関係者が語る。