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 ただ、新宗教だからといって「悪いもの」「誤ったもの」だと短絡的に判断するのも考えものだ。アフマディーヤ教徒はその教義ゆえに、かつて本部があったパキスタンでは激しい弾圧を加えられ、多くの信徒が海外亡命を余儀なくされている。

 津島市のザ・ジャパンモスクは、パキスタンで迫害を逃れたアフマディーヤ教徒が、中京圏にかなり大勢暮らしていることを示している。私たちの訪問時、このモスクは無人だったが、外に「興味のある方はいつでもお気軽にお越しください」と書かれていたので、鍵のかかっていない扉を開けてホール内を見てみることにした。

ザ・ジャパンモスクと統一教会は、それぞれがやや似た宗教的ポジションに置かれているためか、草の根で仲良くしているらしく、ザ・ジャパンモスク内には統一教会から送られた表彰状も。2022年5月21日にザ・ジャパンモスク内で。撮影:Soichiro Koriyama

 建物の内部は、隣の津島アヤソフィアよりもいっそう広大だ。世界各国からの寄付が集まったという敷地内の説明にも、説得力を感じた。ちなみにザ・ジャパンモスクから国道を挟んだ斜め向かいには、なんと統一教会のかなり大きな教会も存在する。宗教的にキャラの濃い面々が揃いすぎて、目まいがしてしまいそうだ。

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ガチのアラブ料理という「新・名古屋メシ」

 イスラム教は、信徒の生活全体を規定した教えである。食事についても、イスラム法の枠組みのなかで食べることを許された料理(ハラルフード)がある。すなわち、原材料に豚肉や血、アルコールなどを用いず、羊肉や牛肉・鶏肉についても宗教的に正しい方法で食肉化処理をおこなった肉を使った料理だ。調理にあたっては必ず流水を用いる。

愛知県安城市の新安城駅付近にある、インド人経営のハラル食堂&雑貨店。店内に「女性専用の食事ルーム」があるなど本格的だ。2022年5月21日。撮影:Soichiro Koriyama

 外国人のイスラム教徒の多い中京圏では、ハラルフードが食べられる「異国飯」のレストランも数多くある。なかでも、日本語メニューがろくにないガチのインドネシア料理を食べられる安城市のアル・アミン、津島アヤソフィアのトルコ人たちの胃袋を満たしている津島市のトルコ料理店オットマン・キッチンなどはおすすめだ。

 この日、私たちが向かったのは名古屋市の港区にある、超ガチなエジプト・アラブ料理を出すレストラン「SEDRA」である。Googleストリートビューを確認すると、2021年4月までは日本料理系の創作ダイニングが入居する物件だったようだが、近年になりアラブ料理店に変わったらしい。

お酒を出さない店(イスラム教徒は飲酒しないため)とはいえ、空腹の男3人で夕食をたっぷり食べて、なんと会計が5000円代。安すぎる、美味すぎる。2022年5月21日。撮影:Soichiro Koriyama
食後に「SEDRA」前にたたずむ、『移民時代の異国飯』著者の山谷剛史。2022年5月21日。撮影:Soichiro Koriyama

「SEDRA」では、かつては畳の座敷だったと思われる場所が、履物を脱いでくつろげる中東風の空間に変わっており、中東系の子連れの家族がみんなで夕食をとっていた。だが、ざっと見たところ、午後9時前の時点でほぼ満員に近い店内にいた日本人は、イスラム教徒と結婚した日本人女性らしき人たちをのぞけば、私たちだけ。令和時代のハラル名古屋メシは、実に味わい深かった。