写真は4枚の黒いカーペットに見えるかもしれない。しかし、これは敷物ではなく、日本で我々の口に入るひじきだ。

 

 訪れたのは、中国の浙江省温州市。「温州みかん」で有名なみかんの産地だ。ちなみに、日本の「温州みかん」の産地は鹿児島県や和歌山県で、中国産ではない。温州はみかんだけでなく、沿岸部でひじきの養殖がさかんに行われている。

 写真のひじき加工場は、温州市の沿岸部・洞頭県にある。巨大な海苔のようにも見えるひじきが地面に直接敷かれて、天日干しされていた。照り付ける真夏の日差しによって、早く乾燥させるためだという。見学しようと、敷地内に足を踏み入れた途端、警備員が慌てて飛んできた。

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「入っちゃダメだよ!」

 中国語でまくし立てられ、敷地内から追い出されてしまった。ここまで来て、ひじきの実態について、潜入調査できないのか――。

 通訳の日本人ジャーナリスト・林真宣氏も「商談のために来た」と食い下がったものの、警備員は職務に忠実だった。従業員に連絡すらしてくれない。

「ウチは入れないけど、すぐそこのひじき加工会社は警備員なんていないよ」

 警備員はニヤリと笑って手を振った。いい情報を入手して向かったひじき会社は、すぐ近くだった。

地べたに敷かれたひじきの上にタイヤ痕らしきものが

 ここも同じように、ひじきを地面に干している。追い出されたひじき会社と違って、地べたに直接干しておらず、薄いシートを敷き、その上にひじきを並べていた。

 

 広い敷地に所狭しとひじきが並べられており、足の踏み場も少ない。よく見ると、地べたに敷かれたひじきの上にタイヤ痕らしきものがある。車がひじきの上を通っているのだろうか。