いまも残る全国各地のレトロ百貨店
先にも触れた通り、近年は佐世保玉屋と同様に、屋上遊園地の縮小や閉鎖、さらには百貨店そのものの閉店が相次いでいる。だからこそ今、訪れてほしいレトロな百貨店を最後に紹介したい。
現在、全国に現存する屋上遊園地の数は10を切っている。
その中でも松坂屋名古屋店の屋上遊園地には、電車や機関車の乗り物やゴーカート、コイン遊具など屋外に置かれた乗り物遊具が多い上に、メダルゲームやUFOキャッチャーなど数十種類のゲーム機が所狭しと並んでいる。土日ともなると朝から親子連れで賑わう、人気の屋上遊園地だ。
長崎市の中心街、浜町に建つ浜屋百貨店。その屋上にも遊園地が営業中だ。
たくさんのコイン式遊具を始め、ゲーム機や乗り物も数多く揃っている。屋根のある場所も多く、雨の日でも楽しめるのが嬉しい。また、浜屋にも前金制のファミリーレストランが営業している。
サンプルケースには、長崎名物のちゃんぽん・皿うどん・トルコライス、さらには百貨店の名がつけられた「浜屋定食」まで並んでいる。ここでしか食べられない浜屋定食を選ぶと、名入りの箸袋が出てきたことに胸が熱くなった。
鹿児島市の中心街、天文館にはひときわ目につくルネサンス調の立派な建物、山形屋百貨店がある。
1998年、大正初期の外観に復元されたもので、夜には美しくライトアップされる。建物内部も柱や梁などが復元されており、高い天井とシャンデリア、柱には大理石の化粧貼りが施されている。また、7階には山形屋の大食堂が営業中のほか、地下1階の金生まんじゅうでは、山形屋の店標が焼印された饅頭が人気だ。カステラのようなふわふわの生地になめらかな白餡が入った、今川焼き風の饅頭は、山形屋の包装紙に包まれ、おみやげにも最適である。
経営不振や耐震問題など、さまざまな背景でなくなりゆく全国各地のレトロ百貨店。その姿を目にすることができるために残された時間はあとわずかかもしれない。