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〈写真多数〉懐かしさMAXの屋上遊園地、前金制のファミリーレストラン、味わいたっぷりの包み紙…レトロな魅力たっぷり! ローカル百貨店「玉屋」を探訪してみた

〈写真多数〉懐かしさMAXの屋上遊園地、前金制のファミリーレストラン、味わいたっぷりの包み紙…レトロな魅力たっぷり! ローカル百貨店「玉屋」を探訪してみた

2022/06/23

genre : ライフ, 歴史,

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 遊園地の隣は展望広場になっており、夏場はビアガーデンになっていた。そこにはなんとも違和感のある岩壁が切り立っている。岩壁は近くで見ると、どうやらハリボテのようだ。

ビアガーデンの季節はライトアップされ、岩壁から“幸福の滝”が流れる。

 遊園地の係の方に聞くと、ビアガーデンの季節には岩壁がライトアップされ、上から人工の滝がチョロチョロと流れ落ちるという。そう、これが案内板で見つけた「幸福の滝」である。次、佐世保に来るときはビアガーデンの季節にと考えたほど、私の心をひきつけるおもしろい仕掛けだ。

屋上の片隅にある祐徳稲荷大神

 さらに屋上の一角には、ミニ稲荷大神が鎮座していた。そばにはおみくじの機械まで設置されている。それほど広くない敷地に、あらゆるエンタメが凝縮されている佐世保玉屋の屋上は、私にとって忘れられない場所となった。

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百貨店ならではの“おもてなし”

 帰りは階段でゆっくり降りていくことにした。すると踊り場で、心をぐっと掴まれるキャッチフレーズを発見する。

階段の踊り場で見つけた玉屋のキャッチフレーズ。佐世保玉屋のほかに伊万里玉屋と長崎玉屋が描かれている

 しあわせは

 バラの包みを

 ひらくとき

 玉屋の包装紙にはバラが描かれている。わずか16文字だけで、贈る人、もらう人の笑顔と情景が思い浮かぶ、しあわせに満ちたフレーズである。

営業継続における課題も…

 しかし、そんな佐世保玉屋は現在、耐震診断の実施をめぐるトラブルを抱えている。

 法律で「1981年以前に建てられた病院やデパートなど不特定多数が利用する施設のうち、“一定の基準を超えるもの”については耐震診断結果の報告」をすることが義務付けられているのだが、佐世保玉屋はその報告を怠ってきたというのだ。

 前回の命令の際には「2022年3月末までに建て替え工事に着手する」と回答していたものの、営業は現在も続けられており、2022年6月1日に出された3度目の命令では、「来年5月末までに工事に着手しない場合は、耐震診断結果を報告する」旨の内容が伝えられた。

 佐世保玉屋では現在、周辺の商店などと準備組合を設立し、再開発ビルの建設に向けた協議を続けているという。

 全国各地の百貨店が相次いで閉店している事実からも、経営は一筋縄ではいかないものなのだろう。しかし、困難な状況にあっても、有事の際に来店客を守れない状態で営業を続けている可能性があることは看過しがたい状態だ。

 長崎県にかつてあった玉屋のうち、「長崎玉屋」は2014年に、「伊万里玉屋」は2016年にすでに閉店してしまっている。安全・安心に買い物ができ、賑わいのあるアーケード・百貨店が佐世保の町に存続し続けるためにも、前向きで有意義な再建設・開発協議が進むことを切に願っている。