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デパ地下のない百貨店

 玉屋の歴史は1806年から始まり、創業210年を超えている老舗の百貨店だ。今回私が訪れた佐世保玉屋は1920年、鉄筋4階建てで開業。現在の建物は1968年に増築されたもの。

佐世保玉屋のプレート。ストアフラワーのバラが縁を飾る
佐世保玉屋の入り口

 佐世保玉屋は1階から8階まであるが、2022年現在は1階から3階までと営業を縮小している。

 商店街側から入店すると、佐世保玉屋には地下がない。つまり“デパ地下”がなく、1階では化粧品や婦人雑貨と一緒に食料品が売られていた。

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5階のおもちゃ売り場の上は吹き抜けになっていた

 2階から4階には婦人服、紳士服、生活用品が並び、5階のおもちゃ売り場は吹き抜けになっていた。

懐かしさたっぷりの“ファミリーレストラン”

 現在ほとんどの百貨店には複数の専門店からなる“レストラン街”があるが、かつては、百貨店が運営する“ファミリーレストラン”があるのが一般的だった。

 佐世保玉屋の6階にも百貨店が運営するファミリーレストランがあった。入り口のサンプルからメニューを選んだのち、レジで食券を買う前金制である。

玉屋が運営するファミリーレストラン。サンプルを見てメニューを選び、入口のレジで注文する前金制
テーブル席と小上がりの座敷がある

 広々としたフロアにはいろんなタイプのテーブルとイスが並び、大きな窓からは佐世保の景色が一望できる。パーテーションには花が咲き、エレガントな雰囲気を演出。テーブル席の中には、小上がりの座敷も用意されていた。小さなこどもが歩き回ったり、高齢者が足を伸ばせたりと、幅広い世代に対応している親切設計だ。

テーブルに用意されている湯のみとやかん
箸袋には玉屋の名入り。この特別感がうれしい

 テーブルに用意された小さなヤカンから、自分でお茶を注ぐセルフスタイルに、懐かしく涙する方も多いのではないだろうか。そして、百貨店のファミリーレストランでうれしいのはなんといっても名入りの箸袋である。百貨店の名入りというだけで特別感と格式を感じ、庶民的な食事でさえかしこまってしまう。

 1階食品売り場には、全国的に姿を消しつつある、回るお菓子コーナーが営業中。仕切られたスペースごとに個包装になったチョコやアメなど様々な種類のお菓子がぎっしりと詰まり、クルクルと回転し続ける。流れてくるお菓子から好きなものを少しずつ選べ、夢のような買い物ができた。

1階食品売り場にある回るお菓子コーナー

 初代のものはもっと大きかったそうだが、売場面積をとってしまうため食品フロアリニューアルの際には撤去の話も出たという。しかし、サイズを少し小さくして残された。そうした経緯からも、長年愛されてきた歴史が窺える。