日本一の歓楽街・歌舞伎町の隅っこから、西武新宿線は西に向かって走ってゆく。田無や東村山、そして西武池袋線と交わる西武鉄道のザ・ターミナル所沢を経て、終着駅は本川越駅である。

 本川越駅はナゾの……というほどのことはなく、その駅を玄関口とする川越の町は“小江戸”でよく知られる観光地だ。むしろ首都圏の私鉄の中で唯一都心の地下鉄に直通していない西武新宿線そのもののほうが、沿線の人以外には謎めいているといっていいかもしれない。

西武新宿線“もうひとつの川越の駅”「本川越」には何がある?

 とはいえ、本川越駅を巡ってはいくつか気になることがある。

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 ひとつは、なんで“本”を頭にのっけているのか。もうひとつは、同じ川越市内には東武東上線・JR川越線の川越駅があること。他にも市内にはいくつかの駅があるが、玄関口としての役割を持っているのは本川越駅のほかに東武・JRの川越駅があるというわけだ。そして西武新宿線と東武・JRの線路が交わるところには駅はなく、互いにそっぽを向くように川越の玄関口を担っているのだ。

 川越のふたつの玄関口のナゾ。それはいささか気になるところである。

本川越にやってきた

今回の路線図。西武新宿駅からは特急「小江戸」では約45分、特急券のいらない急行ならば1時間ちょっとで「本川越」に到着

 そこでとにかく西武新宿線に乗って、本川越駅にやってきた。西武新宿駅からは特急「小江戸」では約45分、特急券のいらない急行ならば1時間ちょっとで到着する。

 特急であろうがなかろうが、西武新宿線の列車は駅の手前で東武東上線をアンダーパスし、ビルの中に突入するようにして本川越駅に到着する。

 本川越駅は南にプリンスホテル、北に商業施設のPePeがあるというしつらえで、その1階部分に櫛形のホームを持っているのだ。改札口は2階と1階の2か所にあるが、外に出るのを急ぐならば1階が便利だ。階段もエスカレーターも使わないでそのまま駅の外、川越の街につながっている。

 

川越といえば…

 川越といえば、やはり小江戸、蔵の町。「時の鐘」なるシンボルがあって、あとは江戸情緒の漂う蔵造りの町並みが見どころの首都圏屈指の観光地である。ならば足を運んでおくのが礼儀というものだろう。

 本川越駅の東口に出て、駅前を南北に走っている道を北側に進むとほどなく蔵造りの町並みに着く。南北に長く伸びているその町の途中で右手に折れれば時の鐘。まさしく小江戸と呼ぶにふさわしい町並みを抜け、東には近世まで川越を治めた川越藩のお城がある。

 城の敷地は学校などに変わってほとんど残っていないが、本丸御殿は現存だ。江戸時代末期の建物だというが、その当時の本丸御殿がそのままに残っている例は、意外と少ないらしい。