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日本のそばの自給率はたったの20%…神奈川に「奇跡のそば畑」を作った男が始めた“すごいビジネス”

2022/06/21
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耕作機械のシェアビジネスも開始

 また、農業の大規模化に必須のコンバインなどの耕作機械をアカデミー卒業生や近隣の農家にも貸し出したり修理したりするシェアビジネスも開始した。石井社長はかつてプロのカーレーサーをしていたのだが、その頃の人脈やノウハウがここでも活用されている。

コンバインなどの耕作機械が並ぶ

「農地が狭い日本では農地耕作者の高齢化が進み、農作放棄地が後を絶たない。日本の農家が6次産業化を推進するには誰かが大規模化、機械化、集約化をして、共同体的に農家を束ねて補い合う仕組みを作らないと始まらない」と石井社長は熱く語る。

そば農家を支援する取り組みも

 最近、石井社長は玄そばの品質区分の確認を行う者(品質確認主体)の資格も取得したという。これは関東農政局から付与される資格。国は規制改革の一環として審査官の多様化を推進しているとか。「丹沢そば本店」には玄そばの等級分別機などが常備されており、審査官としてお墨付きを得た形だ。  

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 通常、そば農家は収穫した玄そばをそのまま農協などに納めるが、分別をしていないため1等級、2等級などの認定が得られず、圏外として廉価で取引されてしまうことが多い。「丹沢そば本店」に依頼し審査すれば、分別して高値で売ることができるので、農家としても収入増につながるというわけである。

 石井社長はさらに、農業体験ができる宿泊施設、ジビエ解体施設、イベントでそばや農産物を販売できるスペースなどがある「天空の丹沢そば村」を三廻部地区に構築している。休憩用露天風呂も完成したという。

「天空の丹沢そば村」の看板
イベント施設
ジビエ解体施設も完備した
テラス展望台からの眺め

 アカデミー卒業生は施設を有料で借りて、ビジネスに利用できるというシステムである。テラス展望台から望む眺めは壮観だ。