小3のときに赤羽の街中で電線を眺めて……
石山 電線を初めて意識したのは小学3年生の頃。父の職場がある赤羽で街中を眺めていたとき、「電線が生き物みたいだ!」と感じたんです。そのうねっとした躍動感や流動感に不思議と魅了されて。そこから自然と目で追いかけるようになりました。
これは大人になってから気付いたんですが、私は昔から“うねるもの”に興味があったんですよね。小さい頃に、映画『もののけ姫』に出てくるタタリ神を見て、「線がうねっている……この生き物やばい!」と感じるようになったのがきっかけで。それ以降、うねっとした線に目を奪われてしまいます。
葉っぱの葉脈も好きで、小学生のときは理科の観察の時間がとても楽しかったです。
――たしかに葉脈を見ると「動いているな、生きているな」と感じるかもしれません。
石山 植物に這う葉脈の線をものすごく近くで見ながら、「ああ、この葉っぱも生きているんだな」と不思議な気持ちになるんです。
そしてこれは、電線にもつながる部分だなと思っていて。電線も街を動かすために重要な存在なので、街中で電線を見上げて「都市の血管なんだな」と尊く感じています。
11年撮りためた電線写真は約1万5000枚
――小学3年生で電線に魅了されてから、どのように“電線愛”を深めていったのでしょう。
石山 高校生になって写真部に入り、そこからは街中の電線写真を撮るようになりました。大学生になってからはパソコンの外部ハードディスクに「電線フォルダ」を作って、そこに写真を入れています。もう11年くらい撮りためていて、今は1万5000枚くらいありますね。
街を歩いていて「この電線いいな」と思うと、何枚も連写してしまうんです。最初に撮ったときにピンとこなかった写真も、何年かたって見返してみると「これはすごくいい電線!」って思い直すこともあるので、なかなか写真を整理できなくて……。
――休日は1日中電線写真を撮る日もあるそうですね。
石山 休日もそうですし、国内旅行や海外旅行へ行ったときにも電線写真を撮ります。2020年1月には、電線を撮るためにタイのバンコクまで行きました。
観光地は歩けば歩くほど新しい電線と巡り合えるので、観光スポットを回るのは、ついでの用事なんですよ(笑)。福島県へ温泉旅行に行って、数百枚分の電線写真を撮っていたこともあります。
――電線を撮るときのこだわりはあるんですか?