石山 私は電柱なめ(編注:画面の手前に電線、奥に電柱をとらえる構図)で撮ることが好きです。でもその体勢で撮影していると首や腰が痛くなるので、休憩を取りながら(笑)。
街の景色と電線の表情が美しく見えるポイントを発見できるのは、奇跡の瞬間なんですよね……電線を照らす光の加減はすぐに変わってしまうので。その瞬間を逃したくないから、いろいろな所で連写をしてしまうんです。
自分が動いているようで、電線自身が動いているのに合わせてシャッターを切っているような気がします。
「夜の電線がエロい」と感じる理由
――ちなみに、ご自身が好きな電線の表情は。
石山 いろいろあるんですけど……夜の電線は“エロい”んですよ。
――夜の電線がエロい……。
石山 電気って、電線をつなぐことで生み出されるじゃないですか。夜になると、その電気によって今度は電線が間接的に照らされる。そのときの電線の表情が好きなんです。
街や道を照らす電気の光によって、電線が月みたいに光ってツヤが出ている……それを見ると、はたらく電線の“健気さ”を感じるし、「エロくてかっこいい!」とも思いますね。
それに、私が電線に感じる“エロさ”は人間関係や社会の中で生まれたりする性愛的な感覚とはちょっと違うんです。いい意味での“静けさ”や“ドライさ”があって、見ていて落ち着く。“エロ”とは言いつつ、電線ならではの色気にうっとりしてしまいます。
電線のファンであり、マネージャーでいたい
――電線のお話をされているときは、石山さんの表情も生き生きとしています。
石山 自分の好きなものについて話をしてると、心がすごく穏やかになるし、とても楽しいんです。それに私の話が「もしかしたらほかの誰かの役に立つかもしれない」と思うと、幸せがループしているなと。自分の好きを伝えることで、誰かがすこし喜んでくれる。そしてそれが私の幸せになるので。
例えば、Instagramなどで電線について発信していると、電線を作っている方やお仕事で扱ってる方から「面白い電線の見方ですね」とコメントをもらったり、知らない人からも「電線っていいですね」と反応があったりするんです。そうやって、自分の“好き”を中心につながる人たちが周りにだんだんと増えてきたように思います。
――石山さんを中心に、“電線好きの輪”が生まれてきたと。