第43回将棋日本シリーズJT プロ公式戦(以下、JT杯)が、6月25日の佐藤康光九段―糸谷哲郎八段戦から開幕する。JT杯は、選抜されたトップ棋士12名が公開対局の早指し戦を行うトーナメント戦だ。出場者は以下のように決まる。

・前回優勝者
・当年2月末日時点でのタイトル保持者
・獲得賞金ランキング上位者

 将棋界のトップオブトップが集まる棋戦といって差し支えない。今回の出場者は、豊島将之JT杯覇者、藤井聡太竜王、渡辺明名人、永瀬拓矢王座、羽生善治九段、斎藤慎太郎八段、木村一基九段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、菅井竜也八段、佐藤康光九段、山崎隆之八段である。

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将棋杯日本シリーズ JTプロ公式戦の特色は「公開対局」。多くの観客がドラマの目撃者となる

第1回の日本シリーズでは米長が優勝

 改めて、過去のJT杯をデータ面から振り返ってみたい。

 まず、最多優勝は6回優勝の谷川浩司十七世名人である。最初の優勝が1989年の第10回大会で、6回目の優勝が2009年だ。羽生九段が5回優勝しているので、今回優勝してようやく追いつくことになる。そして準優勝の回数もこの2人がそれぞれ5回でトップタイと、ことJT杯においては、両者の実績が突出している。

 今回の出場者の中では、豊島と渡辺が3回、佐藤康が2回、山崎が1回優勝している。なお、昭和棋界のレジェンドは、米長邦雄永世棋聖が3回、加藤一二三九段が2回、大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人が1回優勝している。1980年度に行われた第1回のJT杯は、この4名による選抜で、米長が優勝した。

昨年大会の覇者は、豊島将之九段。藤井聡太竜王との決勝戦を制して3度目の優勝を果たした

五段以下で日本シリーズを対局したのは郷田のみ

 3回の優勝歴があるのはもう一人、郷田真隆九段である。1993年度の第14回から第16回まで3連覇した。JT杯で3連覇を達成したのは、この時の郷田が唯一である。トップ棋士しかいないトーナメント棋戦で3連覇というのは偉業である。

 ちなみに郷田は、第14回にノミネートされた時点では王位を保持していたが、自身のJT杯初戦を指す時には王位を失冠しており、五段の肩書で対局していた。類似の状況で、肩書が六段としてのJT杯出場は屋敷伸之九段と三浦弘行九段も経験しているが、五段以下で日本シリーズを対局した(及び優勝した)のはこの時の郷田しか例がない。