鮎釣りと言えば伝統釣法である友釣りが有名だが、一方では釣りを始めるまでのハードルが高いことでも知られている。8m前後の専用ロッド(今でこそ3万円台で購入できるが……)、また生きた鮎(オトリアユ)を購入する必要があるなど、釣りの中でも専門性の高いジャンルとして確立されている。

 そんな孤高の鮎釣りだが、近年「アユイング」と称されるルアーでお手軽に狙える釣法が話題となっている。一体どんな釣りなのか、筆者が毎年通う多摩川で調査してきた。

ルアーで鮎釣りに挑戦

鮎は何をエサにしているのか

 アユイングについてお話しする前に、そもそも鮎釣りについて理解しておく必要がある。鮎は人の生活圏に近い河川の中下流域に生息し、食べても美味しい魚にもかかわらず、道具などを考えると簡単には釣れないもどかしさがある。そこには鮎の生態系と食性が関係している。

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多摩川の投網で捕れた鮎

「年魚」とも言われる鮎は、1年でその生涯を終える。秋に産卵が行われて孵化した鮎は、川を下って冬の間は海で過ごす。東京湾では、真冬の港湾や漁港で見つけることができる。

 早春、海水温が川の水温と並ぶ頃、10cm前後になって川へ遡上する。その頃はプランクトンや水生昆虫を捕食しているので、鮎の解禁直後はオランダ釣り(コマセを用いた川のサビキ釣り)や毛バリで釣ることができる。

 そのまま成魚となっても同じ釣り方で狙えるなら、鮎釣りはもっと手軽で身近な存在だったはずだ。しかし、初夏頃から鮎の成長と共に川の水温が上昇して川底の石に珪藻類(苔とも呼ばれる)が生えだすと、それらを容易に捕食できることから、これまで釣れていたサビキや毛バリに反応しなくなるのだ。

 成魚の鮎釣りが難しいのは、撒き餌や虫餌に反応しづらい食性に移り変わるためだ。

鮎の成魚

 では、かたくなに珪藻に執着する鮎をどのように釣るのか? そこで生まれたのが友釣りだ。

 縄張りに侵入してくる鮎を排除する習性を利用して、オトリアユの下側に仕込んだかけ針にアタックしてきた鮎を掛けるのだ。「友釣りのハードルが高い」という言葉だけが一人歩きしているが、そもそも鮎が主に苔しか食べていないのが原因であって、友釣りはもっとも合理的な鮎釣りだと言える。