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 本格派のメニューを取り揃えた食堂に後ろ髪を引かれながら、断腸の思いで施設を後にする。今日は向かう所があるのだ。ととのった体でゆっくりと下町の商店街を歩く。駒込の北側は北区に接しており、下町情緒がまだかすかに残っている。JRの高架下をくぐり、商店街を抜け、小さな路地に入る。すると目に飛び込んでくるのは高賢と書かれた鮮やかな赤ちょうちん。

酒場として正しい

由緒正しき酒場のたたずまい

 もつ焼き高賢。中に入るとテーブル席がいくつかあり、カウンターは店内の奥まで伸びている。カウンターの中ではモツ串がいいにおいを漂わせながら白煙を上げている。その前に陣取り、まずは焼酎ハイボールを注文。下町では“ボール”という呼称で愛されている。危険な飲み物だ。今日も無事にサウナに入れたことに感謝。いよいよジョッキに口をつける。美しい黄金色の液体は、食道がまるでウォータースライダーかのようにするすると喉を通過、胃に到達する。するとアルコールが体に取り込まれ、気持ちのいい感覚がじんわり立ち上がってくる。

氷なしの“ボール”。デンジャラスな飲み物だ。

 ようやく心も落ち着き、ゆっくりと店内の様子を眺める。所狭しと掲出されたメニューの数々。ひっきりなしに焼かれているウマそうな串焼きはもとより、マグロの脳天炙り刺し、トマトとザーサイのナムルなど、一見オーソドックスだが、一癖ありそうなメニューが、もつ焼き屋のそれとは思えないくらいのバリエーションで迫ってくる。

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独創性に富んだツマミの数々

 一品目に頼んだのは高賢ポテサラ。山頂にのせられた半熟味玉から流れ出る溶岩のような黄身がねっとりと絡まり、濃厚この上ない。ととのった体に、なかなかの先制パンチ。

映える色使い

 次にトマトとザーサイのナムル。薄くスライスされたトマトとザーサイの赤と緑のコントラストが目にも鮮やかで食欲をそそる。見た目のオシャレさに反してパンチのきいたタレはどんどん酒を進ませる。どのメニューも常に臨戦態勢。

 そこへ肉刺し3点盛りが到着。ピンクがかった肉の表面にしっとりと水分を湛えるその瑞々しさは、官能的としか言いようがない。その文字通り肉感的な歯ごたえと、噛むほどにじみ出る肉本来のもつ甘みがもたらす旨味の底なし沼に、堪らず水風呂(酎ハイ)へ直行。酎ハイの炭酸水は、サーバーから注ぐ炭酸水を使用。ラインナップもハイサワー、ザクロ、クエン酸など、どれも水風呂だったら今すぐ飛び込みたい申し分のないラインナップ。