2021年度に20連勝で連勝賞を受賞し、C級1組に昇級した渡辺和史五段(27)。

 大学1年の秋に初参加した三段リーグは、1勝17敗の歴代ワーストで降段点と厳しい洗礼を浴びた。2期目の参加から持ち直すも、5期目はあと1勝で昇段の一番を逃し、7期目には再び降段点。昇段したのは12期目で、歴代1位タイの16勝2敗の成績を収めた。

渡辺和史五段。趣味はバスケ、NBA鑑賞だという

 取材中、渡辺は淡々と奨励会生活を振り返っていたが、三段リーグの勝敗や昇段レースの状況を克明に記憶しており、それを語るときは自然と熱くなっていった。一息つくと、不思議そうに「12期もやっていると、意外と覚えているもんですねぇ」とつぶやく。半年にわたるリーグは、それほど期待と絶望を行ったり来たりした日々だったのだろう。たとえ連勝を重ねたとしても、最後の最後で脱落すれば、すべては無駄になって年齢制限が迫ってくるのだから。

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 後編では三段リーグと順位戦昇級、20連勝について話を聞いた。7月9日に放映される準公式戦のABEMAトーナメント(藤井聡太チームとの対戦)にも大いに期待したい。

なぜ成績がよくなったのか

――三段リーグ2期目は白星スタートながら5連敗を喫します。最終的には8勝10敗で、5勝の規定を満たして降段点を消しました。

渡辺 5連敗で直近が2勝22敗だから、降段を覚悟しました。そしたら、次に大阪の例会で2連勝したんです。

「連勝することがあるのか」と感動しましたよ。大橋さん(貴洸六段)に勝って5勝目を上げたときは、降段点から解放されてうれしかった。最終日は1局目に黒沢さん(怜生六段)に負けて、勝った黒沢さんが他力ながら昇段したんです。それが悔しくて、そういう気持ちが戻ってきたのは成長でした。

 なぜ成績がよくなったのか、よくわかりません。勉強法は変えていないので、2年生になって大学との両立に慣れたからでしょうか。ゼミの先生にも恵まれ、例会とゼミの発表の日を遠ざけてもらったり、普段の発表をつなげていけば卒論になるようにうまく指導していただきました。

上位がバタバタ倒れて、最後は井出さんが

――4期目は12勝6敗と好成績です。5期目は11勝7敗で、最終日を自力で迎えながらもあと1勝が届きませんでした。

渡辺 4期目は最終日に昇段の目がなかったものの、2連勝で12勝6敗になったのは自信になりました。10勝8敗とは全然違い、プロになることもある星取りですから。しかし、5期目は11勝3敗から4番連続で負けて、結果的にひとつでも勝っていれば昇段だったという……。

 上位がバタバタ倒れて、最後は井出さんが上がったんです(たまたまインタビューの場に居合わせた井出五段。その話を聞き「その節は……としかいいようがなくて。私なんかが何とか生きていけるのも、いろんな方に助けていただいて……」と頭をペコペコ下げて、渡辺を笑わせた)。