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――相手に研究でハメられそうで、怖くなかったですか。

渡辺 ハメられないように、最新定跡からちょっとずらすんです。逆にいえば、いい勝負の局面で地力の競り合いになったら、いい成績を残せる自信があったんでしょうね。当時はそれで戦えましたが、いまの三段リーグはソフトの研究ゴリゴリで大変だと思います。

長谷部四段と二転三転の激戦

――2019年10月付けでプロ入りします。2020年度(2020年4月~2021年3月)の成績は31勝15敗(0.674)。そして2021年度は31勝12敗(0.721)の成績を残し、20連勝(2021年10月~2022年3月)で連勝賞を受賞、順位戦でC級1組に昇級で五段昇段と活躍しています。特に今年3月のC級2組の最終局・長谷部浩平四段戦は、昇級と昇段、藤井聡太竜王が持っていた連勝賞のトップ19連勝にタイがかかり、また長谷部四段は勝利が降級点回避の絶対条件と、双方にとって大一番でした。

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渡辺 連勝はあんまり意識していませんでした。目の前の一局を戦うに当たって、関係ないですからね。

 

 順位戦はラス前に2連勝すれば昇級という状況になったのですが、その前に強豪の八代弥七段、服部慎一郎四段に勝って1敗を守ったんだから、本音をいえばもう上げてほしかったです。

 長谷部さんとは研修会からの知り合いです。普段の交流はなく、長谷部さんが上がったときの三段リーグは私が勝ちましたが(2017年)、プロになってからは負けています(2020年の叡王戦)。ずっと苦しめの将棋を粘って、二転三転の激戦でした。

楽しい勉強だけじゃなく、自分に負荷をかける

――結果を出せた要因は?

渡辺 勉強方法は特に変えていません。1月にABEMAトーナメントで渡辺明名人から指名をいただき、ドラフトが発表される前にちゃんと結果を残したかったという気持ちがよかったのかもしれません。

 

 名人には昨年の大みそかに研究会で教えていただく機会があり、たまたまいい将棋を指せたので声をかけていただいたようです。いまとなって化けの皮が剥がれていると思いますが(笑)、がっかりさせないように頑張りたいですね。

――今後の抱負をお願いします。

渡辺 トップ棋士とたくさん指して、その強さを感じたいです。特に藤井竜王は当たるのは本当に大変で、自分が勝ち上がらないとずっと公式戦で指せないまま人生が終わるかもしれません。一局ぐらいは指したいですよ。

 自分を唯一褒められるのは、将棋が好きなことでしょう。でも、アマチュアのときとは違います。楽しい勉強だけじゃだめで、自分に負荷をかけないと伸びません。上にいけるように頑張ります。

写真=平松市聖/文藝春秋

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