京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇』(文春文庫)より、背筋も凍る「身代わり」を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。(全2回の1回目/後編に続く

◆◆◆

 動物には、巣立ちの時期があります。例えば、キタキツネの場合、子供が大きくなって、餌も一人で取れるようになると、巣穴に帰ってきた子供を親が攻撃して、敢えて独り立ちをさせるそうです。その時、小狐は親に巣穴に入れてくれるようにお願いをしますが、親は決して許す事なく攻撃をするそうです。

ADVERTISEMENT

 そうやって巣立った小狐は、やがて成長し、親があの時、攻撃して来た事の意味を知る訳です。そして自分が親となった時、やはり我が子にも同じ事をするのです。

写真はイメージです ©iStock.com

 何故この様な事をするのかと言うと、同じくらいの量の餌を食べる狐が、何匹もそのテリトリーで暮らせないからです。すなわち、飢え死にを避ける為だと考えられております。これ以外にも専門的に見ると理由は色々と考えられる様ですが、私はこの様に思うのです。

 順当に行けば、親が先に死ぬ訳です。ですので、若く力のある内に巣立ちをさせ、一人で生き抜く知恵を付けさせる為ではないかと。勿論、本当の事は、親狐さんに聞いてみないとわからないですが。

人間の巣立ちの時期は「反抗期」

 さてこの様に、動物の世界には巣立ちの時期がある訳ですが、人間の世界ではどうなのでしょうか。成人の日を迎えると大人の仲間入りが出来る、という意味では、それが巣立ちの時なのでしょう。

 成人式は、国によって年齢も異なります。早い国では、14歳という所もあります。そして儀式も色々とありますが、中でも恐ろしいのがマサイ族の成人式です。14、5歳になった男の子は、一人でサバンナに行き、ライオンを狩って帰って来なければ、一人前の大人として認めて貰えません。私がマサイ族の人間であれば、未だに成人出来ずにいる事は間違いありません。

 さて次に、人間を動物という観点から見てみましょう。その場合、巣立ちの時期は、反抗期と呼ばれるあたりではないかと私は思っております。