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「これだけはやめて」桐本君が見せた抵抗

 次の日、桐本君が放課後に帰宅するところを待ち伏せして、先生に虐めを言いつけた事を謝らせようとしました。

「おい、桐本、お前先生に俺の事を言いつけたな」そう言って、お腹を思い切り蹴り付けました。すると桐本君はお腹を押さえながら地面に倒れ込みました。

 私は彼のカバンを取り上げると、中にある財布を見つけました。そしてお金を取ったのです。それでも桐本君は、何の反応もしませんでした。他にもカバンの中に何かないかと探すと、小さな御守りが出てきました。私はその御守りを地面に投げ捨てましたが、彼は必死にその御守りを拾いに行きました。

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 お金を取られても動かない彼が、あの御守りには反応するのかと不思議に思いました。そして私は彼からその御守りを取り上げようとしました。しかし、桐本君はその御守りをしっかり両手で握りしめ、絶対に渡そうとしませんでした。

写真はイメージです ©iStock.com

「これだけはやめて。他の物は何でもあげるから」虐めるようになってから、殆ど声を出さなくなった彼が、この時だけは大きな声でそう言ったんです。

 そう言われると余計に気になって、殴る蹴るを繰り返し、私は力ずくで御守りを取り上げました。彼は地面に倒れながらも、私の足首を強く握り「返して欲しい」と泣きながら懇願してきました。しかし私はその手を振り払い、上から思い切り踏みつけて、そのまま家に帰りました。

御守りの中にあったもの

 その日の夜、私は2階の自分の部屋で、寝る前に、その御守りを色々と調べてみました。

 御守りの外見は、お寺や神社によくある一般的なものでした。前には大きく「身代わり御守」と刺繍されていました。外から触ると、何か厚みのある物が中に入っているのが分かりました。そして触っている内に、私は中身を見てみたいと思ったのです。

 そこで、紐を外して開けようとしたのですが、上部も縫ってあり、中身が取り出せないようになっていました。それを見て、余計に中身が見たくなり、私はハサミで御守りの上部を切る事にしました。

 御守りの袋は思ったよりも分厚く、中々ハサミで切ることが出来ません。ですので今度は、口の部分を縫い付けている糸だけを切る事にしました。すると、比較的簡単に切ることが出来、袋を開けられたのです。

(後編に続く)

 

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