京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇』(文春文庫)より、背筋も凍る「身代わり」を特別公開。同級生の桐本君を殴りつけ、御守りを奪い取った「私」。その日の夜、御守り袋を開封してみると――。(全2回の2回目/前編から続く

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 袋の中には、1枚の木片が入っていました。そしてこの木片には、内容はわかりませんが、お経のような文字が書かれていました。私は、たったこれだけしか入っていないのかと、苦労した割には収穫が少なかったことに不満を感じていました。

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 そもそも、この御守り袋には「身代わり御守」と刺繍されていました。持っている人に何か嫌な事があれば代わってくれる、という意味ではないのか。もしそうなら、桐本君が虐められて嫌な目に遭っているのに、この御守りは何の役にも立っていない事になります。お寺や神社って嘘つきだなと、思いました。

写真はイメージです ©iStock.com

 桐本君は身をもってこの事を分かっているはずです。何の身代わりにも守りにもなっていない、それなのに何故あの時彼は、これだけは取られたくないと言ったのか。この時にはまだ分かりませんでした。

 私は御守り袋と中身の木片を、窓の外に思い切り放り投げて捨ててしまいました。

その日の深夜、私を襲った “恐怖体験”

 その後、漫画を読んだりして、寝たのは深夜1時を回っていました。その頃は、毎日のように深夜に寝る生活をしておりましたので、学校にも昼から登校するような、荒れた生活を送っていました。

 夜寝ていると、突然目の前が明るくなったのに気がつきました。寝ていたので勿論目は閉じていたのですが、それでも分かるくらいに何かが光ったのです。

 目を開けると部屋の中は暗く、気のせいかと思いました。しかし、一瞬ですがまた部屋の中が明るく光ったのです。目がおかしくなったのかなと思った瞬間、窓の外から光の玉が飛び込んできました。そして、ゆっくりとゆらゆら空中で止まりました。