京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇』(文春文庫)より、背筋も凍る「共感」を特別公開。

 家賃の安さに惹かれて、事故物件に暮らす30代の女性。かつて住人が自殺したというマンションの一室に引っ越した後、怪しい人影、隣室の騒音などの怪現象に悩まされるようになったのだが――。(全2回の2回目/前編から続く

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 この日私は、仕事のクライアントの方と直接お会いして打ち合わせをしました。その後、友達とご飯を食べに行き、遅い時間まで居酒屋に居ました。その時に、この友人に今回の不思議な話をしますと、このまま私の部屋に泊まりに来ると言うのです。正直、心細い気もしていたので助かりました。

 私達がマンションの前に着いたのは、深夜2時を少し回った時間でした。エレベーターに乗り、4階のボタンを押すと、ゆっくりと上がり始めました。

「このまま他の階に止まったりしてね」などと友人が冗談を言っていると「ガタン」という音と共に、エレベーターは停止してしまいました。

写真はイメージです ©iStock.com

 呆気にとられる友人と目を見合わせた私は、直ぐに非常用ボタンを押しました。呼び出し音の様な音はするのですが、なかなか出てくれません。もう一度押そうとしたその時、男性の声がインターフォンから聞こえて来ました。

「〇〇警備会社です。どうされましたか」

「エレベーターの中に閉じ込められました」そういうと「少しお待ちください」と言って、暫く静かになりました。友人は「これは心霊現象かもね」と笑っていました。

「お待たせしました。直ぐに動かしますので少しお待ちください」再び静かな時間が流れます。

 このアナウンスから数分が経ちましたが、一向に動く気配がありません。友人も私も、何となく不安になって来ました。