暑い時期には暑いところに、寒い時期には寒いところに行くのが旅の王道だと勝手に思っている。そしていまは夏である。ならば南国、宮崎だとか鹿児島だとか沖縄だとか……もいいが、いまはだいたい日本中どこに行ってもクソ暑い。もはや暑い時期には暑いところへ、の個人的な旅のメソッドが成立しなくなってきているのだ。
……と、思っていたところで頭に浮かんだ町がある。そう、“あついぞ!熊谷”である。
日本一暑い!「熊谷」には何がある?
熊谷は、毎年夏になるとやたらとフューチャーされる町のひとつだ。2018年7月23日に記録した41.1℃は観測史上最高記録(2020年に浜松市も41.1℃を記録していまは1位タイ)。つまり日本でいちばん暑い町、というわけだ。
おかげでワイドショーやら何やら、猛暑の日にはこぞって出かけて「熊谷、暑いです!」と叫ぶという、誰もがわかりきっていることをわざわざ披露するというナゾパフォーマンスを繰り広げているのである。
そんなわけで、熊谷という町の存在を知らぬ人はいまい。上越新幹線に乗っても熊谷駅を通る。車窓の向こうに流れ去る熊谷駅を見て、「ああ、ここ暑いところでしょ」などと会話を交わしたことのある人も少なからずいるに違いない。
そうなってくると、「暑い時期には暑いところへ」の法則に従えば、とにかく熊谷に行くべきなのだ。そして、“暑い”以外の情報をほとんど持たない熊谷に、何があるのかを見ておかなければならない。結局ワイドショーと同じことをしているような気もしますが。
「熊谷」はそもそもどこにある?
熊谷は、埼玉県北部にある町だ。上越新幹線でいえば大宮の次。高崎線だったら大宮駅から30分~40分程度で到着する。埼玉県北部ではいちばん大きな都市というから、熊谷駅もそれなりに大きなターミナルなのだろう。
そういう気分で高崎線に乗って熊谷駅に降り立った。“あついぞ!”なのだから駅のホームも夏の太陽が燦々と……と思ったら、とてつもなく薄暗い。高崎線のホームの真上に上越新幹線のホームがあるから、陽の光がみごとに遮られて薄暗くなっている。おかげでそれほど暑くもなく、人の流れに乗って橋上駅舎の改札口を出る。
乗り入れているのはJRだけでなく…
熊谷駅の付近は線路がおおよそ東西に通っている。乗り入れているのはJRが高崎線と上越・北陸新幹線。そしてもうひとつ、秩父鉄道というローカル私鉄も通っている。
橋上駅舎のコンコースを南側に行くと、JR側とは明らかに格差を感じる小さな改札口があって、そちらが秩父鉄道だ。小さいといってバカにしてはダメで、SLパレオエクスプレスも熊谷駅から出発して長瀞などの景勝地を目指す。