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――将棋界に限らず時代として、そのような発言が許されていたこともあったでしょうね。昔は女流棋士が今よりも低く見られていたのではないでしょうか。

中倉 世代による考え方もあると思うのですが、私が若い頃、年配だった棋士の先生には「そんな将棋でお金はとれない」とか「女流棋士は将棋弱くてもなれて(聞き手などの)仕事があっていいよね」とか、しょっちゅう言われていました。今はそんなことはなくなり、若手女流棋士に「昔は弱いとバカにされ泣いたこともある」と話したら驚かれると思います。

女流棋士全体のレベルが上がった

――大成建設杯清麗戦、ヒューリック杯白玲戦(女流順位戦)ができましたし、収入面でも大きく変化したのではないでしょうか。

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中倉 対局料だけで食べていける状態にだんだん近づいていると思います。清麗戦も白玲戦も、LPSAの力ではなく日本将棋連盟とスポンサー様により実現したもので、私たちは指させていただいている。ありがたく感謝しています。以前は3カ月対局がつかずモチベーションが上がらないこともあったのが、大幅に対局が増えました。女流棋士の役割には普及のお仕事も大きいと思うので、それを含めると将棋だけで自立できる人が増えました。

 

――女流棋士の将棋のレベルも大幅に上がったのではないでしょうか。

中倉 20年前は私より1つ年下の矢内さん(理絵子女流五段)、千葉さん(涼子女流四段)が女流タイトル戦に出ていて、2人は奨励会2級でした。今は奨励会三段を経験した里見さん(香奈女流五冠)と西山さん(朋佳女流二冠)がトップ。トップのレベルは大幅に上がり、その里見さんから伊藤さん(沙恵女流名人)がタイトルを奪ったり、全体の水準が上がったと思います。すごく嬉しいことで、私もなんとかついていかなければと思いますし、GSPの女の子たちにもそんな話をしています。

昔は父親の影響で将棋を始め、女流棋士になった方が多かった

――里見女流五冠が棋士編入試験を受験されますが、どのように感じましたか?

中倉 まず受験資格を得たのがすごいこと。昔は男性棋戦に成績上位の女流枠があってもなかなか勝つことは難しかったですし、ある男性棋士が陰で「なんで奨励会を卒業していない女流棋士と平手で指さないといけないの」と言っているのを聞いて、ショックを受けたこともありました。自分が目指して憧れている女流トップの人がそんな風に言われてしまったのですから。

 里見さんはより強い環境で将棋を指したい気持ちだと思います。それは将棋の王道です。ひょっとすると女流タイトルホルダーとして、何かしがらみのようなものがあったらかわいそうだなと考えていましたが、皆さんが応援してくれる状況なのだとわかって安心しました。女流棋界全体にとって良いことで、私も応援しています。

 昔は父親の強い影響で将棋をやって女流棋士になった方が多く、私たち姉妹もそうでした。20年近く前に里見さんが女流棋士になり、その流れが変わったように感じています。里見さんは、将棋が大好きでやっているのが伝わる方です。