自ら将棋に取り組んでいる人の方が伸びる
――中倉先生のお父様が熱心に将棋をさせていらしたのは聞きました。他にも父のスパルタ教育で女流棋士になった方もいらっしゃるようですね。蛸島先生もそうでした。
中倉 父に将棋をやらされていると感じたことはありました。でも、だんだん自分で勉強に取り組むようになりましたし、育成会に入ってからはずっと女流棋士に憧れて、なれたときは本当に嬉しかった。誰かにやらされたままではプロでやっていくことはできないし、レベルが上がった今、いっそう自ら将棋に取り組まないと女流棋士になることもできなくなったと感じています。
本人より親御さんに力が入っていたり、期待が大きすぎたりするお子さんは、将棋が苦しくなってやめてしまいがちとも思います。里見さんはきっと、終始一貫自ら将棋に取り組んできて、そういう人のほうが伸びるのだろうなと思います。
――LPSAは、大人の女性への将棋普及にも積極的ですよね。その核となる大会が、15年開催を続けたアパガード杯女子アマ将棋団体戦ではないでしょうか。
中倉 おかげさまで毎回100人以上の女性に参加していただいています。他の大会でもそうですが、毎回アンケートを取り、意見を取り入れ改善しながらやってきました。今は、男性の入場は指導者や保護者など選手と関係のある方に限り、それもすぐ近くでは見られないように制限しています。
余計なお節介から女性を守りたい
――誰でも見ていいようにすると、見ず知らずの女性の感想戦に割って入る男性がいたりするからですよね。私も、大会で私の対局を見ていた知らない高齢男性に「終盤がなってない」とお説教されたことがあります。文春オンラインでも、スポーツジムやボウリング場、そして将棋道場にもいる「教え魔おじさん」の記事が反響を呼んだことがありました。
中倉 はい。最初は制限してなかったのですが、そういう男性が嫌だったという声もありました。同じ女性として考えた時に不快なのは分かります。もちろんそんな男性ばかりでないのですが……。
悪気はないとしても、ダメ出しみたいなことを言われると萎縮してしまいますよね。特に級位者の女性は「弱いと言われたらどうしよう」「大会はちょっと怖い」みたいな不安がある。それでも勇気を出して大会に参加してくださっているのですから、余計なお節介から女性を守りたいという気持ちがありました。
――アパガード杯女子アマ団体戦といえば、参加賞や賞品がいろいろあることも評判ではないでしょうか。昨年のオンライン大会では、「こんなにいただきました!」とメダルや賞品を並べた写真をツイッターにアップする女性がたくさんいました。
中倉 ツイートはありがたく拝見しました。嬉しいですし、賞品をご提供いただいたスポンサーの皆さんにも反響をお知らせできて喜んでいただけました。