事実は小説より奇なり。この言葉が最も相応しい作品が『殺人者への道』(ネットフリックスで配信中)だ。2015年にパート1(全10話)が配信されると、ドラマを越える驚愕の展開に全米が騒然となった。

 このドキュメンタリーは冤罪で18年間服役した男、スティーヴン・エイヴリーが刑務所から釈放される場面から始まる。ウィスコンシン州の小さな田舎町に暮らす彼は1985年、身に覚えの無い婦女暴行の罪で有罪判決を受け、2003年にDNA鑑定で無実が証明された。その事実だけでも筆舌に尽くしがたいが、これはほんの序章に過ぎない。

 釈放後、彼は一躍“時の人”となる。冤罪の恐ろしさをメディアで訴え、地元マニトワック郡と保安官、地方検事を相手に3600万ドルもの巨額の賠償請求訴訟を起こす。その審理の中で衝撃的な事実が明らかとなる。実は8年ほど前に他の郡で逮捕された真犯人が罪を告白していたのだ。郡保安局はその報告を受けながら誤認逮捕を認めず放置していた。深まる疑惑、追い詰められる郡関係者……。

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©佐々木健一

 そんな中、耳を疑うニュースが飛び込む。なんとスティーヴンが新たな殺人事件の容疑者として逮捕されたのだ。彼の自宅の敷地から被害者の車が発見され、中には彼の血痕も。自宅裏の地面からは焼かれた被害者の骨も見つかる。

 だが、何かがおかしい……。不自然な形で見つかる証拠。現場にいたのは訴えられていた警部補と巡査部長だ。次々浮上する証拠改竄・捏造疑惑。共犯者として逮捕された16歳の甥には自白強要の疑いも。

 10年以上に及ぶ取材でこの事件を追った本作は全米に波紋を広げ、2018年には続編のパート2が配信された。過去に17名もの冤罪を晴らしてきた超敏腕女性弁護士が登場し、驚愕の真犯人説まで飛び出す。

 果たして彼らはハメられたのか。見始めたら止まらない、イッキ見必至の裁判実録だ。