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「初めてバスに乗って遠征に行ける」と喜んでいた球児たち

 拙著『コロナに翻弄された甲子園』の取材で日大三に訪れた際、小倉全由監督からこんな話を聞いた。今年の3月19日に栃木の作新学院、翌20日に国学院栃木と練習試合を行った際、当時はオミクロン株の蔓延により、栃木県内に宿泊することもままならなかった。作新学院との練習試合を終えると、一度日大三の合宿所に帰ってきてから翌朝5時半に出発して国学院栃木のグラウンドに向かった。

小倉全由監督 ©️文藝春秋

「このとき選手たちが、『高校野球で初めてバスに乗って遠征に行ける』と喜んでいたんです。コロナ以前はバスに乗って移動して相手校のグラウンドで試合をすることなど当たり前のように行っていたのですが、この2年間はそれすら満足に行うことができなかった。

 その声を聞いて、『本当にそうだよな』とあらためて認識したのと同時に、『この2年間、かわいそうな思いばかりさせて申し訳ないな』という気持ちになりました」

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 これまで遠征をしての練習試合や日大三のグラウンドに相手を迎えての招待試合は、3月から11月下旬にかけて、ほぼ毎週末のように行われていた。それがコロナ禍ではほぼ半分以下にまで減ってしまった。

「練習試合はレギュラーはもちろんのこと、控えの選手も出場させますから、そこで自分の現在の実力はどの程度あるのかという、腕試しができる場でもあるんです。ところが、ここまで試合数が激減してしまうと、それが十分にできなくなってしまう。実力の見極めが正当にできないことで、私も当の選手本人も困ってしまうことが多かったんです」(小倉)