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《曖昧な死刑基準》「7歳の女の子のズボンとパンツを脱がせ、指を…」“あまりに残虐な殺人事件” 遺族は「欲望のままに娘を餌食にした」と極刑を訴えた…

判例から死刑制度を考える #2

genre : ニュース, 社会

 安倍元首相殺害事件で山上徹也容疑者の捜査が続いている。山上容疑者は11月29日まで鑑定留置されたあと、責任能力に問題がないと判断されれば起訴される予定だ。検察幹部は事件発生当初「死刑求刑も視野に捜査を徹底すべきだ」と厳しい姿勢で臨んでいたが、山上容疑者の不遇な家庭環境が明らかになってくると、トーンダウンしているという。

 日本の死刑制度では、被害者が1人の場合には死刑判決が言い渡されることは極めて稀である。山上容疑者も無期懲役以下となる可能性が高いが、尊い命を残虐にも奪った容疑者に極刑が下されないのか。死刑の判断は40年以上も前の「永山判決」が基準となっているが、9つある指標のなかでも重視されるのが「殺害手段の残虐性」や「被害者数」だと言われている。3人以上を殺害すると死刑となるケースが多く、1人や2人の場合は回避される傾向にある。

 安倍元首相殺害事件を機に、改めて死刑制度について考えてみたい。(全3回の2回目/1回目3回目を読む)

送検される山上容疑者 ©文藝春秋

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「永山基準」を逆手にとった犯行

「3人を殺したら死刑になるので2人までにしようと思った」

 2019年12月4日、男は横浜地裁小田原支部の法廷で悪びれる様子もなくはっきりとこう話した。

 名前は小島一朗(23・公判時)。2018年6月、神奈川県内を走行中の東海道新幹線の車内で、20代の女性2人を刃渡り約19センチのナタで切りつけて殺害しようとし、止めに入った会社員の男性(38・事件当時)の首や太ももをナタやナイフで切りつけ殺害した。

 女性2人に対しては「残念ながら殺し損なった」、男性については「見事に殺しきった」などと言ってのけ、「刑務所に憧れがあった」「更生はしない」とまで話した小島被告。自らに科される刑について、「有期刑になれば必ずまた人を殺す」と話し、無期懲役を希望して、その通りの判決となった。日本の司法制度に定着した永山基準を逆手にとった犯行といえるだろう。

小島容疑者が残していた自殺願望を示すようなメモ(画像の一部を加工しています) ©共同通信社

「永山基準では、死刑判決は、殺人被害者が1人の場合は基本的に適用されず、2人で可能性が高まるが、それでも死刑でないことの方が多い、3人以上は特別な事情がない限り死刑になる傾向にあります。小島被告は1人殺しのため、犯行後の印象が悪くても死刑にならないことを見越して、法廷でも言いたい放題だったのではないでしょうか」(司法担当記者)

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